四天宝寺

□共犯
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ねえ白石。


貸し借りの愛なんて、見飽きたんだよ?





掠れた声で名前を呼び合う。

明日には、覚えていないんだろう。



どうせ白石は俺のことなんも思っていないだろうし。
俺も、正直よくわからない。


暗い部屋で名前を呼んだら
することがないから、何を求めるでなく
自然と肌を重ね合わせて。



「白石……」




ねえ、白石。

白石はテニスが好いとうね。
テニス主義やけんね。

それでも、人肌さみしかとや?
やけん、俺を選んだとや?



「ほら、千歳よく俺に付き合うてくれるやん?
俺もこれぐらいサービスせなアカンやろ?」

特に欲しいと言ったわけでもないいろいろなものが増える。

白石、俺は別に貸し借りのつもりで白石に付きあっとるわけじゃなかよ?


でも、なんで付き合っているかなんて聞かないでほしい。




今日したキスの数。
名前を呼び合った数。
優しく触れる指。
汗に濡れる髪。


明日には、忘れてしまうんだろう。

すべてリセットされてしまうんだろう。




俺は白石が好きやけん。
恋愛かどうかは、わからんけど。

だから、白石のやりたいこつ応援してあげたい。
俺を求めるなら差し出すし、
全国制覇の夢もかなえてあげたい。


だけど、毎日毎日2人のことがリセットされていくのがさみしい。
この関係にさみしいも何もあるのかわからないけど。


白石がいつもみたいに泊まりに来て
いつもみたいに一緒に寝て。

白石の体はかなり疲れているようで
毎日すぐに寝てしまうのだけれど、
隣で寝ている俺はそうやって、しばらくの間考え込んでしまう。



「千歳。そろそろ認めてくれへん?」

放課後いきなり白石に言われた。

「なんを?」
「俺んこと。」
「白石んこつ?
白石のなんを認めっとや?」

「いろいろ。」

そうして、いきなりキスをされる。

俺はびっくりして周りを見回したけど
周りに人はいなくて安心した。

そして、白石とは話すよりも
キスをする方が気持ちが伝わる気がして。

すぐに離れた唇がさみしい。


夜は、少し白石ん所気持ちが伝わってくる。

いっそのこと総てを俺にゆだねてくれればいいのに。

白石の全部。
欲求、嬉しさ、悲しさ、辛さ、
全部全部。

そんな貸し借りの愛なんてもうやめたかよ。
飽きるまで、白石の傍にいたか。
飽きるまで、白石の隣にいたかよ。


寝返りを打った白石の唇がちょうど俺の耳元にくる。

彼の吐く息が耳に当たって、若干くすぐったいので俺も寝がえりを打とうとしたした時だった。





「千歳…好きや……」








それは、今まで彼の口から聞いたことのない言葉だった。

白石、遅かよ。
そぎゃん、もう手遅ればい…。


嬉しいのか何なのかわからないけど、
すぐに涙がこみ上げて、白石の隣でずっと泣いていた。


耳元でこぼされた秘密はあまりに無防備。


そぎゃん…もう……。


白石のまぶたにキスをして、唇にキスをした。


白石。
いつになったら本当のこつば言う?

俺から言うんは嫌ばい。

どちらにせよ、もう遅か。

ふたりが恋に落ちてしまっているからもう遅い。



明日になったら、俺のこの気持ちもリセットされてしまうのだろうか。

白石の秘密も。
白石への思いも。
落としたキスも。

それでも白石は、明日気づいてしまうのだろう。


白石がどうするなんて、俺はわからんから。

俺が忘れる前に、寝ている白石へキスを落とす。



「白石…好いとうよ……」




fin


アダルトちとくら。
塚不二のアダルティーは結構書くんですけど、
もっとありそうなちとくらで書いたことないんじゃね?
とか思いまして。
なんてったって、うちのちとくらははいつでもバカップル(笑)

111021




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