四天宝寺

□空想
1ページ/1ページ

もし、


もしも、俺と謙也さんの立場が逆転していたら。





「謙也さぁーん。」
「はぁ?今忙しいんやわ。話しかけんな。」








結構傷ついた。



ただの空想なんだけども、
おれはときどき、ひとりでこうして、
ひとりで落ちこむ。





「謙也さんがおらん…?」

「謙也?誰やそれ?」
「んなやつ四天にはおらんて。」



明日、謙也さんが、いなくなって。



「おー、謙也ー。昨日はどないしたんや?」
「別になんもないで。ただサボってみただけや。」
「うわー、ついに自分も千歳化したか。」
「千歳化ってなんや!?」


明後日、帰ってきて。


「謙也さん。」

「………。」


そのかわり、心変わりして。


「金ちゃん、一緒に練習しよか。」




いつか、謙也さんに嫌いになられたら。






謙也さんと出会って、心の持ち方が変わった。

俺にとっての財産は、あんたや。


それなんに、どうして自ら泥沼にはまるんやろ。

ホンマ、アホやわ、俺。








「財前、自分なんで俺のそばにいつもおるん?」

「なんでって、俺らが組んだダブルスが一番強いから」
「でもそれやからって、いつも一緒におらんくてええやん?
正直うっといんやわ。」

「うっとい?
誰に向かってうっとい言うてんねん!」
「後輩や後輩!
ただの後輩やんか。」




「氷帝?」

「今からな、転向しといたほうが高校も大学も楽やねん。
せやから、東京行くわ。」

「なん?なんでなん??
俺ら付き合うとるやん!
謙也さんは俺んこと好きやなくなったん!?」

「ちゃうねん、光。
嫌いになったわけやないんや。」






俺の空想の中の謙也さんは酷い男だ。




「なぁ、謙也さん。
もし、俺らが違う学校の生徒で
テニスで戦うことになったらどうなってたんやろな?」

「……さぁ?」


部活の帰り中、謙也さんに空想を語ってみた。


「別にどうでもようない?
俺あんま空想に更けたりせんからなぁ。
今は今やし。
俺と光が出会えたんも、偶然の重なりのおかげやない?」



俺の空想を、一瞬で終了させられてしまった。




「そうっすね。」


「そうやで!
俺は、光とおる今が一番楽しいんや!」


そうして頭をクシャリとなでられる。

10センチ差の身長が、
恨めしいような、嬉しいようなだった。



その日、良い夢を見てしまった。



「光!
一生大事にする!
俺と結婚してください!!!」


がちがちに緊張する成人謙也。


その謙也さんは、

太陽みたいに笑う、良い男やった。




fin



ひとりでいろいろ考えて
勝手に落ち込んでたら
それはそれで光っぽいなぁって
思った結果。
111012




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ