四天宝寺

□I'm so in love with you
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14歳を迎えた次の日の朝、
俺と謙也さんは目が真っ赤だった。


「…謙也さん、目。」
「自分もひどいで、鏡見てきたらどや?ちゅう話や。」


おまけに目の周りがはれている。






結局あのあと、ずっと泣いていた。
おそらく謙也さんも。

一生懸命声を抑えて、ただ溢れる涙をとめられなくて。


「……あーあ。」
「なんすか、朝から。」
「なんか、すっきりせえへんなって思って。」
「なにが。」
「いろんなこと。口に出して言えば、すっきりするって思うてた。
すっきりせえへんなぁ。」


口に出すというのは昨夜のあの話なんだろう。


「謙也さん。着替えましょ?」
「…おん。」


とりあえず学校へ行く準備をした。





「今日で一学期終わりやな。」
「そうっすね。」
「全国までもうちょいかぁ…。」
「謙也さん、全国で俺らのダブルスは絶対なんすから、ヘマしないでくださいよ。」
「せんわ!朝から失礼なやっちゃなぁ。」



朝、謙也さんはすっきりしないって言うとった。

ってことは坂田先輩の告白もあやふやにするかもしれへん。



今日は一学期最終日。

告白の返事するとしたら、まず今日やろ。
しかも謙也さんのことだから、返事をメールで済ますなんてせえへんと思うし。

どないするんや。
そうしたとして、
今日返事をしたとして、
---OKを出したとして。

俺はどないしたらええんやろ。






「じゃ、光。また放課後な。」
「はい。」



これから約三時間。
俺は謙也さんに会わない。

その間に謙也さんはなにするんやろ。

俺の知らない間に。




























放課後になった。
あんまりにも不安になってしまったから、
女々しいとわかりつつも、3年の教室までいく。


「謙也?階段のとこにおらへんかった?」

教室に謙也さんがおらんかったから、
ちょうど部活に行く準備をしていた白石部長に居場所を聞く。


階段とこ?

ちゅうと俺が来た時おらんかったから
もう一個の方の階段か。


そちらの階段に向かうと、たしかに謙也さんの声が聞こえた。

ただ、姿が見えたときに息が止まりそうになった。




一緒にいたのは坂田杏美。





「で、うん。俺も、杏美のことめっちゃすきやねんけど…。」



耳をふさぎたくなる衝動になんとか打ち勝った。

坂田先輩は明るい表情で謙也さんの話を聞いている。

「せやけどな、俺杏美と同じクラスになる前から好きな奴おったんや。
過去のものに無理矢理しようかとか思うたんやけど、
俺臆病…ちゅうんかな。それがめっちゃ嫌やったんや。
せやから今は、ごめん。」

……。

「今はごめんって、なんや?
そんなん…生殺しやん…!」

「えっと、ごめん!ホンマに…。」

「…もうええわ。こっちこそごめん。
好きな人の幸せも考えられへんなんて。
じゃ、うち部活行くわ。」



そう言って坂田先輩は謙也さんに別れを告げた。






あー。


謙也さん俺を選んでくれたんや。

俺男なんに。


めっちゃ嬉しい。



せやから俺も決めなアカンなぁ。






作り笑いは、今日で最後にせなアカンなぁ。









とりあえず、部活へ向かった。
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