四天宝寺

□I'm so in love with you
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「なんや、光と出かけるのなん、ひさびさやな。」


学校が終わって、とりあえずゲーセン行って、プリクラとって、
あとはゲーセンで適当にゲーム。

そのあと2人で帰って、
ご飯。


「光あんまりにもぜんざい好きやから、
てっきり誕生日ケーキぜんざいかと思うたで。」
「んなわけあらへんやろ。ケーキ。
ほら、どこみてもケーーーキ。」

そんな他愛のない会話をして。


14歳の誕生日に、まさか謙也さんがおるなんて。



「にしても、光のお母さん相変わらず料理うまいな!めっちゃおいしかった!」

その声が聞こえたのか、台所にいた母さんは

「あら〜、謙也君〜。うれしいわぁ〜。」

と笑いながら返した。


「けんーやぁーくん〜」

すると甥っ子が謙也さんのもとへ。
これ以上ここにおるといろんな奴が寄ってくるから、さっさと謙也さんを連れて自分の部屋に移動した。






お風呂にも入り(別で)
ある程度ゲームやって、そろそろ寝ることにした。


「あ、せやせや。光。
これ、プレゼントな。」
「は?」

手に渡された紙袋。
カバンの中に入ってたんか、ちょい紙袋がくしゃくしゃになっとる。

「あけてええの?」
「ここで開けんでどこであけるん?」

そう言われて、少々ムッとなりながら紙袋をあける。



「……???」

なかには、黄色い生き物のぬいぐるみが入っていた。


「…なんすか、これ。」
「定期入れ。」
「なんの。」
「ひよこ。」
「誰の趣味。」
「俺。」


きちんと取りだすと、たしかにひよこだった。
きちんと定期を入れる場所もあった。
定期入れの割合少な…。

「光定期のチャック壊れてもうたって言うてたやん。
せやから、俺が買ったっちゅう話や!」
「あ…。」


そんな小さなことを覚えていてくれたのか。
このひよこ頭が。

「おおきに、謙也さん…。」

謙也さんは満足そうに笑った。

「さ、寝るか。光、電気消して。」
「おおおおおおおい。あんた俺の布団で寝るつもりなん?」
「え?一緒に寝るとか思うてたけど。」
「い、一緒に!?」
「嫌なん?」
「え?えーとー」


好きな人と一緒に寝るっちゅうことが、
どんだけ辛いか、
この人は知らん。

知らんから、

辛いことなんか知らんふりをすればええんや。


「しゃーないっすわ。一緒に寝てあげますわ。」
「なんやろ、めっちゃ上から目線。」
「そのかわり謙也さんの掛け布団、朝は保証しませんから。」
「!?」


電気を消して、ベッドに戻る。

「おやすみ。」
「おやすみんなさい。」


熱い。

夏やから、わかっとるんやけど。


熱い。

謙也さんの体が。


俺の体も。



夏だから。



布団に、熱がこもるから。







「なあ、光。まだ起きとる?」


返事をしなかった。

謙也さんの声が、いつもと違ったから。




「……。
俺な、迷ってることがあんねん。
でも今日明日しっかり決めようと思って。」

迷ってることってなんや?
力になりたい。
謙也さんの総てを知りたい。
悩みも全部、俺のものにしたい。


「俺、この間、同じクラスの坂田杏美に告白されてん。」
「………。」

ああ、なんだ。
そのこと…。


「杏美、めっちゃええやつやねん。
で、OKしようかと…思うてる……。」




人は、この時の気持ちをどう表わしたらいいのだろう。


目の前が真っ暗?
自分にとても重たい石が落ちてきた?
息ができない。


そういう、マイナスなもの全部、
あてはまるような思いだ。




「でも、俺、中二から好きな奴がおるんや。
ずっと、好きやった。
今も、好きや。
でも、叶わないって、知っとる。
……せやから、もう諦めようかなって。」
「……。」






「光。

寝てても、届くとええなぁ…。

俺、光がずっと、ずっと


好きやった。」








気づくと、枕が涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。






「光?
でも、俺の気持ちはお前には届かへんやろ?
ごめんな、男の俺が、好きになんかなってしもうて。
でも、俺も彼女作れば、これは勘違いやったって、
思えるかもしれへんしな。
今はめっちゃ好きやけど、
ただの後輩として見れるときが来る…んやろうな。

でもそれ、めっちゃ嫌や。
うん、嫌。
光…好きで、ごめん。」



声が
体が

震えていて。

謙也さんも泣いとるんやって、思った。



一方俺は、なんも言えへんかった。


溢れる涙と、詰まる息。



声が出せへんかった。







せっかく、両想いやったのに。





俺はこのまま、離れようとしているこの人を黙って見るだけなん?





やめてください。



OKなんかせえへんでください。



彼女なんか作らんで下さい。








俺も、謙也さんが好きです。





謙也さんが、好きです。



好きです。





好きです。






好きです。





好きです。







好き……



「……ッ…ッ…………ッ」

「……おやすみ、光。お誕生日おめでとう。」







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