四天宝寺

□真相
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お昼休みに聞いてしまった。



というかまずは、目があったんだ。




「うわっ、気づいたんとちゃう?」
「こっち見とるで、怖いわぁ。」


ああ、陰口。

別に気がつくのは初めてじゃない。
こんなの前からあったことだ。


「あいつもうホンマキモいよな。」
「っちゅうかホンマにそんなヤツおんねんな。キモッ!」


繰り返される、自分への陰口。


向けられる視線に気づいている。
声も、言葉も聞こえる。


どうしていいかわからなくなった。



いままでは、そんなのに気がついたとしても、
どうせ俺は完璧やから。
あいつらより頭ええから
って、ずっと思って乗り越えてきた。


それなのに。




すると心臓が速く動いて、息が勝手に切れる。
手も足もしびれてきて、気持ち悪くなる。


5限の英語が始まってすぐ、保健室へ行った。



保健室につくころには、
手足のしびれ、息切れ、頭痛、腹痛、吐き気が襲っていた。


保健室にある用紙に、
「これからどうしたいですか?」
という質問が書いてあり、
「しばらく教室には戻りたくない。」
と書いておいた。

先生はそれを見て、なにがあったのかを聞き、
つい弱くなってしまった俺は
「自分への陰口を聞いてしまった」
と答えた。

先生は渋い顔をして、ベッドに横になっとき

と言った。


保健室の固いベッドで横になり、
さきほどの教室の喧騒を思い出す。


するとみるみる涙があふれてきた。


それなりに気に入っていたクラスだった。

まさか、こんなにショックだったなんて。


治まらない症状とともに、そのまま5限を終えた。



「白石君、一回教室戻ってみる?早退する?」

保健室の先生に尋ねられ、まず、
教室に行って耐えられるところまで耐えようと思った。

教室へ帰る途中に、クラスの女子が俺に気づき

「白石くん大丈夫?」

と優しく声をかけてくれた。

しかし、俺は誰に対しても、もう普通に話せなかった。

「ああ、まぁ、平気や。
心配掛けてごめんな、もうちょい教室におるさかい。」

そう言って教室に戻り、6限の世界史の準備をしようとしたとき、先程の連中が窓から見えた。

「そういえばこの間こんなことしてたで。」
「あ、あかん!ここからやとモロ見えしてまうで。」

そうして俺から見えない場所へ行った。


その瞬間にすべてに耐え切れなくなった。


教室の喧騒すべてが、もう駄目だった。



「謙也、すまん。俺早退するわ。
先生に言っといてくれん?」
「お、おおわかった。」

そして教室を出た。

出る間に何人かが
「白石君早退するん?お大事に」
と声をかけてくれたが、もう曖昧にしか返事ができなかった。
涙が出そうだったから。

保健室の先生に、やっぱり早退すると告げ、
ダッシュで学校から逃げた。







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