四天宝寺

□あめふりくまのこ
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今日の傘は母の傘だった。




赤い赤い、

真っ赤な赤の傘。


先日傘を盗まれてしまった父が、俺の傘を持っていったからだった。





あめふりくまのこ







「なんで赤い傘やねん。趣味悪いわ。」


雨の降る道を歩く。


普段の雨なら、レインコートを着て自転車登校なのだが、
今日はさすがに危ないとおかんに止められた。

だから最寄りのバス停から2つバスを乗り継いで学校最寄りのバス停まで行った。



学校への道のりで赤い傘をさしながら歩く。


「白石。」

上から声が降ってきて、声の持ち主を探した。

男にしては高すぎるその声の持ち主を。


「千歳。」
「おはよ、白石。」

目があった千歳はにっこり微笑んだ。

そのまま二人で並んで歩く。

「白石、今日は赤い傘とね。
顔が赤く見えるばい。」

にこにこと今気にしている事を言う。

「これおかんのやねん…。
…それにしても、珍しいやん。
千歳がこの時間に居るなんて。」

千歳は遅刻の常習犯だ。
この時間にここにいることが奇跡だ。

「今日は…ね。ちょっと。」
「ん?どないかしたんか?」

千歳が俺の顔を除き込みながら話を続ける。

「今日はどうしても、白石に会いたかったから来たばい。
でね、なんでかなって思いながら来て、白石に会った瞬間にわかったばい。」
「……なんでだった?」





「俺ね、白石んこつ好いちょった。」





「え、」
「白石んこつ好いちょって、白石に会うために学校来たばい。」

わざわざ好きと言うのだから、そっちの意味だろうと思った。


どうしようかと思った。


「ち、ちょい待ってな。」



ああ、だって、






俺も千歳が好きだ。





「うん。」





傘が赤くて良かった。


顔が赤くなってしまったのがわからないから。




fin




このあと付き合っても付き合わなくてもかわいいかなぁと。
あんなに雨降られたらね、こういうちとくら書けって事よね。

110530








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