四天宝寺

□友達になろう
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騒がしくなくなった。



2人で落ち着いて、散らかった部屋を片付ける。



「痛ッ」



光のそんな声が聞こえて、
光を見たら、指から赤いしずくがこぼれていた。


これは一体何だろう?




どうしてこうなってしまったのか?



俺たちはホンマにこんなことしたかったのか?






言いだせずにいる。

2人でいると、喧嘩ばかり。

付き合って12年が経ち、俺も光も社会人。
同棲生活も7年がたつ。

最近は、一緒にいると喧嘩ばかりしてしまう。

お互いに傷つけあう。



それでも、俺は光のことが好きやから。


いつか、前みたいに戻れるもんやと思うてた。

せやけど、戻れない。

戻れる。戻れる。

そう思い続けてずいぶん経ってしまった。


もう、決心するしかない。
お互いを傷つけないために、別れるしかない。

でも、それを拒んでしまう、自己愛。

結果、俺たちはいつまでもこの関係を続けてしまう。





「どうしてこうなってしもたんやろ?」


光が口を開いた。


「ああ、そうや。そうなんや。」



悲しそうに笑って、ひとりでそうつぶやく。


どうして。

どうして?

光、教えて。





「謙也が光のこと考えてるのはようわかるで?」

小春に偶然会った時、相談に乗ってもらった。

「光も謙也のことはよう考えとる。
せやけどな、お互い社会人、
やりたいこと、方向性、いろんなものが違ってしまう場合もあるんよ。
でね、ホンマに、どうしようもないことなんやで」

家に帰って、枯れた声で叫ぶ。

光が耳をふさぐのが見えた。


結局俺らは偶然によって結ばれていただけで、
大人になってしもうたら違ってしまう方向やった。
お互い、認め合うことができない何かがある。




「光、別れよう?」







「あ…。」



ソファに2人で座って、光にそう言う。

視界に光は写らなかった。


涙で視界が歪んでいたから。
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