四天宝寺

□怖くないよ
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「ごめん・・・。ごめんなぁ光。ごめんなぁ。ごめんなぁ。」


車で光を病院に連れていく。


「謙也さん、謝らんで。」


光はいつでも優しい。





大学生の俺たちは、光の大学入学とともに同棲を始めた。

中学の頃部活で知り合い、いつのまにか恋人同士。


好きでたまらない光と一緒に居れる時間が増えることはホンマに嬉しくて。




でも、一緒にいる時間が増えるだけ、

知らない光が減ってきた。


そうすると、俺はいつからか、


光の全部を知っている人間でいたいと強く思った。


光について知らない部分があるのが、すごく嫌になった。




そう思い始めてから、俺は光に暴力をふるってしまうようになってしまった。
暴力を振る間はほとんど無意識で、
正気を取り戻した時には、すでに光はボロボロの血まみれになってしまっている。


俺の手が、足が、
光をそうしてしまっているのが恐ろしかった。

いっそ死んでしまいたいと何回も思った。
それほど、何回も暴力をふるっていたから。

でも、死のうとするたびに、光はいつも、
傷だらけの顔で優しく微笑んでくれる。
そして、いつも、

「俺、謙也さんのこと怖ないよ。
それよか、俺謙也さんと一緒におりたいんすわ。
自殺なんかされたらたまらん。」

そうして、いつも俺をとめてくれる。

その綺麗な顔を傷だらけにしたのだって、俺なんに。








「白石、俺、またやってもうた。
また光に手あげてもうた。
なあ、光血がいっぱい出とった。
骨折れとるかもしれへん…!
光死んでまうかもしれへん!
俺、光殺してまう!!!!」
『落ち着くんや、謙也』

電話越しの親友の声は落ち着いている。

『大丈夫や。財前は死なへん。』


しかし、白石はそれ以上何もいわなかった。


「なぁ!俺どないしたらええんや!!!
大好きなんや!傷つけたない!
世界で一番好きや!
なんでそんな相手あんな血まみれにせな…!
なあどうしたらええんや!!!
なあ!?」

とりあえず落ち着き。まずは財前のそばにいてやるんや。


それだけ言って、白石は電話を切った。




声にならない叫びをあげる。





ずっと、白石や侑士に問い続けている。


俺はどうしたらいいかと。


2人は何も言わない。




俺はどうすべきかの答えを見つけられずに
エンドレスな世界を過ごす。





「謙也さん、謙也さん。
大丈夫やて。大したことないて。」


また、微笑む。



光はやさしい。


ああ、そういう光も大好きだ。



「泣かんで、謙也さん。
俺、謙也さんのこと怖ないよ。
せやから、家帰ろう?
また一緒におろう?」

「おん…。おん…!」

右手はギブスで固められていた。

左足も同様。

頭には包帯。


俺が傷つけてしまった体を抱きしめる。



「光……。好きや…。」
「おん。」
「守ったるからな、守ったるから……。」


光が幸せそうに笑う。


「謙也さん、好きやで。」





fin





光が好きすぎて病む謙也。
日記に書いたら即書いてしまった…。
解決してないね…。
こういう謙光もいいかなぁとか。

110528
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