四天宝寺
□千歳に誕生日を伝え隊計画
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今日は4月12日。
おい、誕生日明後日やで。
「白石、まったくお前あほやんなぁ。」
昼休み、教室で。
謙也にまでそんなことを言われてしまう。
俺だって、わかってる。
千歳に自分の誕生日の月さえ教えられていない。
そもそも考え付くのが遅かった。
「はぁ・・・。好きすぎて困るなぁ・・・。」
「誰が好いとうと?」
「・・うわぁ!千歳!!!」
反応が少し遅れてしまった。
いつの間にか千歳が俺の後ろに立っていた。
「す、すまん。驚かせてしまったとね。」
眉毛を下げて申し訳なさそうに・・・
その顔やめてくれ!かわいくてどうにかなりそうだ!
「い、いや、大丈夫やで。自分、なんで3−2来たん?」
「ん?暇やったけん。
隣んクラスには白石も謙也もおるけん。
遊びに来たと。」
「そ、そか。」
ため息をこぼしてから千歳にほほ笑みかけた。
千歳にほほ笑まれて、少しほっとする。
「今、白石の好きな人んこつ話してたとや?」
ほっとしている暇なんてなかった。
「え、ええ、えっと、いや、その・・・」
「謙也には言えて・・・俺には言えんと?」
お前に言えるわけあるか!!!
「せ、せやで。千歳が好きなヤツ教えてくれたらわからんけど。」
今まで黙っていたスピード狂が口をはさむ。
おいおい、ちょっと待て。
他人事だと思って・・・。
「謙也、お前何言うて・・・!」
「すまんけど、俺ん好きなヤツんこつは言えなか。」
「え、」
耳を疑ったけど、しっかり聞いた。
好きなやつのことは言えないって。
千歳、好きなヤツおるっちゅうこと?
「千歳・・・好きな子おるんか?」
「おるこつは確かばい。白石にはそのうち言うね。」
言わないでいい。
言わないでほしい。
言うな。
「白石?」
心配そうに声をかけてくれる千歳に、うまく返事ができない。
そうこうしているうちに昼休みを終わらせるチャイムが鳴る。
「あ、じゃあ白石、謙也、また部活でね。」
「千歳、今日はテニス部の練習ないで。」
「あ、そうやったね。まだスケジュールはいっとらんけん。じゃあね。」
千歳は自分の教室へ帰って行った。
「白石・・・その・・・」
「はあ、あかんなぁ。」
謙也が何か言いかけていたが、人の話を聞く余裕がない。
「千歳、好きな子おるんや。
そりゃそうやな。あいつかっこええもんな。
かっこいいしデカいしかわいいし、普通にモテそうやん。」
千歳はモテて、
千歳に告白されて断る女子なんかいないんじゃないかとすぐに思って。
千歳の好きな子に千歳の思いが伝わったら、きっと、二人は付き合いだす。
そんな光景をすぐに思い浮かべてしまった。
「俺・・・こんな情けない顔、千歳に見せられへん。」
というか、千歳に会いたくない。
きっと千歳に会ったら、
顔を見てしまったら、
自分は千歳の前で泣き崩れてしまうだろう。
「男が男を好きになるなんて、アカンかったなぁ。」
誕生日を伝え隊の隊員は一人だけだったけれども、
隊は解散しそうだった。