四天宝寺

□優しい人
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「謙也くんはホンマにええ子やねー」
「小春!!騙されたらあかん!
ええ奴な振りして小春食う気やで!!」

「いやいや。
それは絶対ないから。
ん?
光どうしたん?
こっちずっと見て。」

「いや、別に…。」

「んー?
焼きもち?
なぁ、焼きもち?
俺が小春の頭についてる埃をとっただけで
焼きもち焼いたん?ん?」

「うっざ…
いや、間違えた。
うっさいすわ。」

「えっ!?
光!それどっちにしても傷つくて!!」

おいおいと泣くジェスチャーをする謙也さんを冷ややかな目で見た。
あくまで、目は。

本当は、少し嬉しい。
こんなに無邪気な謙也さんを楽しめて。


本当に、忍足謙也は優しい人間だ。


テニス部だけでなく、
3年2組だけでなく、

もはや四天宝寺中学校の全校生徒が
そう思ってる。

この世にここまで清い人間がいるとは…
と、少なからず汚れた心を持っている生徒にとっては、ありえない人間だった。

俺も、そう思ってた。

でも、なにかしら裏があるんじゃないかとは
ずっと疑い続けてた。

それでもこの人に惹かれた。

テニスをしてる姿
人間性

なにをもって、わざわざ男を好きになったのか分からないけど、気が付いたら意識するようになってた。
この人と目が合うと自分の鼓動が聞こえるようになった。

告白はほぼ絶望で、
なんで告白なんかしてしまったんやろって
言ってすぐ後悔した。

でも、こんな正しい人間にでも、間違いはあるようで。

『俺も光が好き。』

心が澄んでて、優しくて、正しい人間が
俺を好き?

素直にこれだと思った。

この人の裏は、俺を好きってこと。
男を好きってこと。

この人の正しいイメージを崩したらあかん。


だから、こっそり付き合うことになった。
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