四天宝寺
□千歳に誕生日を伝え隊計画
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彼女にはしたくないと言われたり
好きな人がいると言われたり。
こんなに千歳が好きだけど、
どうしてもかないそうにない、恋。
最初からわかってはいたのだけれど。
今日は13日。
「白石、大丈夫なん?」
朝、教室に入ってきた謙也に開口一番それを言われる。
「ん?ああ、おはよ、謙也。」
「自分死にそうな顔しとるで。あのあと千歳にあったん?」
謙也の言葉が妙に癇に障り、大げさにため息をつく。
「会うわけあらへんやろ。」
もう本当に、できれば一生、千歳に会いたくないんだ。
会ってしまったら、俺はどうなってしまうのだろう。
「しらい・・・」
「白石。」
謙也が固まる。
俺の名前を呼ぼうとして、他の声に遮られて。
千歳に
会ってしまったら、
「ちと・・・」
どうなってしまうのか?
「千歳。」
また音を立てずに俺の席の後ろに千歳がいた。
どうしよう、汗かいてきた。
「…どうしたん?わざわざ二組に---」
「どげんもこげんもなかよ!
白石どげんしたとや?俺と目合ってもすぐ逃げっとだろ?
なして?俺白石怒らすようなこつしたと?ねえ?」
してない。
千歳は何にもしてない。
「・・・ごめん。」
「なして謝ると!?
白石がなんかした?」
「千歳・・・。」
謙也が千歳に話しかける。
「ごめん。あとで二人で話してやってくれるか?」
千歳は何もしゃべらない俺を見て、うなずいてくれた。
「俺、最悪や・・・。」
千歳に嫌な思いをさせてしまった。
あんなに焦って、困らせて、
本当に俺はひどい奴だ。
「ま、まあ・・・。あとできちんと千歳に話せばええやん。」
千歳にきちんと話すって何を?
「なんや、それ。
なんって言えばええん?
千歳のこと好きで、ショック受けて避けましたって?
アホやん、そんなの。
千歳に振られてまうだけや。
きっと、今度は心配なんてしてくれんくなる・・・・・・。」
大事な気持ちだ。
こんな気持ち、生まれて初めて持った。
人のことを好きになることの心地よさ。
「でも白石がなんか言わんと、千歳はますます白石追い詰めると思うで?
嫌われたくないっちゅう気持ちもようわかるけど、当たって砕けるくらいのいきおいも必要やと思うで?
男やろ?」
「当たって砕ける・・・」
「それにまあ、白石やからなんとかなるんとちゃうん?
男も惚れさせることができそうっちゅうか。」
そんな、俺はいったい何だと言うのか。
「千歳はやさしいし、きっとなにか白石の喜ぶ一言とかでも言ってくれるんとちゃうん?」
そんな、嘘の言葉聞きたくない。
でも、
この間のような本音よりかは優しい言葉が聞けるのなら、
それを最後にしてやってもいい気がする。
「せやな・・・・・・。」
***
「千歳」
「おお、待っとったよ、白石。」
「嘘やん。お前4限サボりよったやろ。」
「おお、ばれてしもうたばい・・・。」
昼休み、屋上に千歳を呼び出した。
ベタな場所だなぁとか思いながらも、きっと千歳は今日もここでサボっているだろうと信じて。
「白石、お昼は?」
「置いてきた。すぐ終わらせる予定やし。」
「・・・そ。で、話聞かせてくれっと?」
「・・・おん。」
まずは、避けてた理由や。
大丈夫や、これなら言える。
「俺な、千歳に彼女にしたくないって言われて、ちょっとへこんだんや。」
「え?」
「千歳俺とは付き合いたくないんやなって。」
「ちが・・・しらいし?」
「避けてたのはな、俺が千歳好きやってん。
千歳が好きで好きでこんな気持ち初めてで、
千歳と会うだけで毎日幸せやってん。
せやけど、自分が好きなヤツおるって言ううて。
あー、千歳も普通に恋するんやとか
千歳が俺のこと好きになることはないんやとか思うたら
頭にごっつ重い石が落ちてきたみたいになってな。
千歳に会うこと、いつの間にか避けとった。
ごめんな、千歳。
勝手に好きになってもうて、ホンマごめん。」
終わってもうた。
あとは砕けるだけや。
「そん・・・白石が俺んこつ・・・?
嘘みたいばい・・・」
動揺する千歳の声が俺の焦りを上げていく。
「白石、聞いてくれんね?」
千歳の前に、立って居たくない。
「俺の好きなんは---」
「いやや!!聞きとうない!!」
気づいた時には階段に向かって走り出していた。
「白石!」
スピードスター顔負けの速さで階段を駆け降りる。
最後に見た千歳の顔は、なんだかとても切ないような、嬉しそうな顔をしていた気がする。
(今日も部活なくて良かった・・・)