上下左右の対称

□九話
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「向こうに奈津さん、居るって…。」

「とりあえず、よかったです」

三之助が日輪に笑いかけながら言った。
はい、と自然に返事をしていた。

奥を探してた作兵衛も戻ってきて、そこら辺にある木箱に腰を下ろした。

「どうすっかなぁ。
今すぐには戻れそうにもねぇし…」

「行き止まり…ですか?」

「だろうな。
でも連絡が出来るだけでも何か変わるだろ」

下を向いてうなだれた日輪を慰めるようにそう言った。
座ったまま制服のズボンを、力強くギュッと握った。

その日の捜索はそれで終わった。

作兵衛、左門、三之助は忍たまの長家に戻り、日輪はくのたまの長家に行った。

「忍術学園って寮制なんですか…」

「遠くから来てる奴も多いしな」

部屋が分からず右往左往していたところ、同室だと言う子に捕まり、どうにか部屋に行くことが出来た。

いつもよりぼんやりしている日輪を不安に思ったのか、
同室の子は日輪を振り回すように生活したらしい。

「奈津、夕飯作りに行かないと。明日はいつもより早く朝練あるんだから!」

「え?あ、うん…?そっか?」

「?」

日輪のその日の残りは不思議そうな顔をする同室の子に、アハハ…と苦笑いを繰り返すことなった。



―彼らは良い人だ

布団の中でそんな事を思っていた。

出会って数時間位しか経っていない人にあんなに優しくできるなんて
きっと、そういう生活をしてきたんだ

日輪は自分のいた未来との違いを肌で感じたような気がした。

ただ、だから怖いのもあった。

人を不快にさせないだろうか、私といてつまらなくないだろうか。

布団から出ると同室の子かどうしたのと聞いてきた

起こしてしまった罪悪感でごめんなさいと口が動いた。

―別に大丈夫だよ―風邪ひかないようにね―

それだけ言うと、また眠りについた様だった。
きっと自分をフォローしてくれたんだろうな、と思った。


人との付き合いが日輪は苦手だった。


必ずしも嫌いな訳ではない。逆にたくさんの親切を受け、申し訳ないのだ。

外を見ると、星がいつもより多く見えた気がした。

今日はたくさんの親切や優しさに触れられたのだ。

(明日は会えるのかな…?)

夜空の星が建物で遮られずに光っているのが、なんだか眩しかった。

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