上下左右の対称

□六話
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「なりすますしかねぇ、他の手段は皆無だ。
話を信じてもらえる可能性も低いし、今すぐに戻るのも出来そうにねぇ。」

日輪は協力的になった作兵衛の話に、しきりに頷いていた。

「こんな所でウジウジ話しても始まんないし、くのたまの服借りて、もう一度鏡を見に行こう。」

「なら作法委員の藤内に聞くか、一着くらいあるだろ。」

やっとのことで団結して、解決に進み始めた。

(なんだか頬が熱い…)

日輪は1人、部屋でそんな事を感じていた。




すれ違った数馬に藤内の居場所を聞くと、図書室にいると聞いたので向かった三人。

「藤内、何の本読んでんだ?」

作兵衛が話しかけると、少し目を輝かせて本の表紙をグイグイ目に近付けさせる。

「忍術学園の七不思議の話だよ。
七不思議の一つで、食堂には霊をも跳ね返す巨人がいるとか、倉庫の全身鏡は異世界に繋がってるとか」

「あ〜、もういいもういい。ところで作法室にさ、くのたまの服無ねぇか?」

「あるけど…何で?」

「いや〜アッハッハ」

三人で苦笑いをしながら、藤内に話を持ち込んだ。

頭にハテナマークを浮かばせてしまったが、本を閉じて了解を得られた。

「ますます怪しいなぁ…別にいいけど。作法室に行くよ」

「悪いな藤内」

女装するの?と聞かれたが作兵衛はノーコメントでスルーした。

そのあと、作法室でとんでもない目にあったのは他でもなかった。


「きゃっ…!だ、大丈夫ですか!?傷がいっぱい…」

「俺、作法委員じゃなくてよかった」

「三之助の言うとおりだな!」

のんきな事を言っている2人の首根っこを、グイッと引っ張る作兵衛。

投げるように日輪に服を渡すと、そのまま部屋を出て行った。

「(着替えろって事…かな?)」

着てはみるが、イマイチ着方が分からず作兵衛達にSOSを出した。

三之助が話しかけながら日輪の服を着付ける。

「日輪のいる未来では着物は着ないのか?」

左門が日輪の制服を見て、呟くように聞いた。

「洋服なので…」

「ようふく?」

「えっと…外国の服です、多分南蛮とか言うのかな…」

あぁっ!!と思い出したように声をあげて頷く。

「俺ら着たことあって、オリエンテーションでファッションショーしたんで」

「ファッションショー…ですか」

現代的、と心の中で呟いた。

そんな会話しているうちに服は着れていた。
くのたまの服として、動きやすくも可愛いデザインだと思った。

逆に、自分には合わない、とも思った日輪。

「どうですか?」

三之助に不安げに話しかけられると、はい、とワザと声のトーンを上げて言った。

「………」

作兵衛が腑に落ちなさそうに日輪を軽く睨んだ。

目が合うと目線をそらして、ため息をついた。

「あ、ありがとうございます」

「…じゃ、鏡んとこ行くか。なんかヒントあればいいが」

ほんの少し重い腰を上げると、一番最初に部屋から出る作兵衛。

どうやら他の人がいないか見ているらしい。
くのたまが居てもダメな訳じゃないが、後から何か言われるのは目に見えているからだ。

「いいぜ、大丈夫」

後は離行の術で、なんとか倉庫までたどり着いた。

足元になんだか金属が当たったような感覚は、無視した。

作兵衛たちの背中を一生懸命追いかけていたからだ。

花壇の花は、少し色あせていた。

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