上下左右の対称
□七話
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「どうにか成功だな!」
「お前らの突拍子もない話が無ければ、早く作戦は成功しただろうよ…!」
わなわなと肩を震わす作兵衛を、ベッドに横たわりながらニコニコ笑って見てる奈津。
保健室へGO-作戦は成功したのだが、それまでの経緯は息が詰まるほど酷かった。
左門はヒマラヤと言うわ、三之助はインフルエンザと言うわで、
先生はあ然、作兵衛は顔が真っ青になった。
「たく……。奈津は、何笑ってんだ?」
「いやぁね、作兵衛君たちは仲良いなーって思って。
それにここって、すごくいいところだなーっとも思ったの」
奈津の話を聞いて、作兵衛は少しだけ悲しいような感情に襲われた。
そんな時に、保健室にある本を漁って読んでいた三之助に、突然声をかけられる。
「作兵衛は、寝るときの体勢は何?」
「はぁ!?仰向けだけど…なにそれ心理テスト?」
「うん。
仰向けの人は『手を抜かない頑張り屋さん!そのせいでたまに苦労しちゃうときも!?』な性格。」
作兵衛にピッタリ とみんなで馬鹿笑いしていた。
「他のは何?」
奈津が目を輝かせて、三之助に訊ねる。
「右向いて寝ると『マイペースな性格』、うつ伏せは『寂しがりで少し自分の殻が固いかも』だって。
あ、あとこれこれ
『寝相の多くて分からない人は、かなり脳天気な考えの持ち主☆』って」
「お前らじゃねーか」
彼らは寝相も、迷子並らしい。
次は腹を抱えて笑った。
四人の声が、保健室で一杯になる。
しかし、その声を打ち消すくらいの大きな着信音が響いた。
「ぅわっ!…なんだ、メールか」
突然作兵衛の携帯電話が唸った。
「誰から?」
「えーと…――っ!?」
作兵衛の顔付きが、変わった。
ありえない、と言わんばかりの雰囲気を感じる。
「…作兵衛?」
「―向こうの日輪からだ。」
『ハァアア!?』
みんなが一斉に声をあげる。静かだったのは奈津だけだった。
「…と言うことらしい。
まとめると、鏡の近くでは電波が立つらしいって。
これで、日輪が向こうに居るって確証が出来たな」
メールで送られてきた内容をみんなに言った。
「日輪、無事で良かった」
「そうだな!!」
左門と三之助は、嬉しそうに言った。
奈津も、安心したような表情を見せた。
「なんて返したの?」
「とりあえずアッチの奈津がコッチにいることと、電話番号書いておいた」
後から詳しく話すため、と言って作兵衛は携帯を閉じた。
「というかなんで日輪、作兵衛のメアド知ってんの?」
三之助が目をパチクリさせて訊く。
日輪と作兵衛達とは、単なるクラスメートなだけなのだ。
「あぁ、春の体育祭の打ち上げでクラスメート全員でカラオケ行っただろ?
あのときシャッフルメアド交換で、日輪と交換したんだよ」
「偶然とはいえ助かったな〜」
「まぁな」
携帯を鞄に戻すと ふぅ、と一息ついた。
なんだかさっきより、空が晴れているように見えた。