上下左右の対称
□三話
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「室町時代…かぁ。」
「多分だけど、一番答えに近いと思うんだ。」
4人で鏡の前に腰掛け、話し合っている。
夏なのだが、蔵の中では涼しい。なのに汗をかいて悩むのだった。
「とりあえず今は学校は無いし、見たのは俺らだけだ。
夏休み中には、きっとどうにかなる。」
作兵衛が言うも説得力は無いし、解決方法は謎。
鏡もあれっきり曇っていて、映らなくなってしまった。
「私はどうすればいいのかな?作兵衛くん。」
「分かんない、そんなこと。
とにかくその格好じゃあ目立つだろうし、バレるだろ。
確か奈津はここは私有地って言ってたから、お前はここに居ればいいと思うけど。」
作兵衛が悩みながらブツブツ言うと三之助が前に出た。
「でも親とか心配するハズだし。家ではそれらしく振る舞わないとダメっしょ?」
親
奈津が図星を掘られたかのように肩を震わしたが、何もないように腑抜けた声で答えた。
「分かったよ。
ところでコッチにいた日輪ちゃんはどんな子だったの?」
同じ顔なんでしょ?と興味深そうに尋ねる奈津。
「あまりアイツの事知らないし…
物静かで、友達と話してる姿は俺らは見たこと無い。
クラスは俺らと同じ中3。中学といっても一環だけどな」
「中3…っていくつ位なの?」
「15とか14。」
「年上!?」
かなり驚いている所を見ると、同い年くらいと思っていたらしい。
「私…まだ、12歳なんだけど…なぁ。
確かにそういえばけっこう背、高いもんね…。」
「大丈夫だ!日輪はあまり身長高くはないし、顔も瓜二つだから気付かれはしないぞ!!」
「どっからそんな自信のある言葉が出てくんだよ…。それに声を小さくしろ!」
作兵衛が暴走する左門のストッパーに入る。
「状況を整理すると、お前と日輪…コッチにいたお前は入れ替わった、と仮定される。
それにお前の話によるとそっちでもこの鏡越しに入れ替わったんだろ?
しかも向こうでは俺らと瓜二つの人物がいる…と。」
「それって俺らも関わってるってこと?」
作兵衛がめんどくさそうに溜息をついて、ゆっくりと頷いた。
「なんでこーんな、漫画やら夢やらみたいなことが起きたんだろー。」
三之助が口を尖らせてボソッとつぶやくと、作兵衛が急に声を出した。
「なんか、どっかで読んだことがある…」
「え?」
「別の世界に、主人公がなんかの物をとおして行っちゃうんだよ。
結果的に夢で終わるんけどさ…なんだっけ…?」
む〜っと悩んでいる作兵衛に、話をかける左門。
ニッと笑って「日輪を家まで送る」といった。
「めんどーだけど、学校に戻って仮病して送るように見せて家の場所聞く作戦。
ちょっとひとっ走りして家にいって服取ってきて、左門。」
「やめろ!行くな!!家に帰れなくなるぞ!!
俺が左門の家まで行くから…そこから絶対に動くなよ!!」
蔵を飛び出て作兵衛が家まで一直線に走っていく。
開けた反動で、蔵の中に暑い空気が流れ込んできた。