上下左右の対称

□二話
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ピンクの変な服を着た日輪のクローンが倒れ込んでいた

「ん…痛い…!―ここ…どこ?」

日輪にそっくりな奴はムクリと起きあがると、不思議そうに周りをキョロキョロし始めた。

顔は全く一緒だけど格好や表情の柔らかさが全く違った。
鏡の中にいた日輪だった。

「…あれ?作兵衛くんたち、いつの間に髪の毛切って着替えたの?」

まるで、漫画にある忍者みたい。

「日輪こそ、いつの間に着替えたんだ?」

「私は着替えてないよ。って…ここはどこなの?」

首を傾げて、
一瞬でめんどくさい事が分かった。

「左門、三之助。
この日輪は別の日輪だ。
予測だけど…、俺らがいる別の世界から来たんじゃないか?」

三人がポカーンとした顔でコッチを見ている
だよなぁ…こんな非現実的な事。

「なる程、つまり私とあなた達は面識がありそうでないって事かな。
私はきっと過去から来たんだわ、ここは何なの?」

嫌な夏休みの始まりになった。
















「…何で」

突然来た奈津は他の人だった。

「奈津、か?」

そう言うと別の奈津はどっちつかずな感じに首を振った。
そして俺らの名前を聞いてきた。
間違いはないみたいだ。

「まさか…そんな非現実的な事があるわけねーだろ?
俺はぜってぇ信じねーからな」

ただただ怖かったのだった。
関わりたくないとも思った。

「…私、分からない…。」

「作兵衛…多分この人がいなくちゃ、あっちにいる奈津は戻って来れないと思う。
だから、かくまうのが最適だよ。」

三之助も場を理解している。
俺だってそれぐらい分かる。
けど
怖いんだよ。
人が居なくなったんだ。
もしかしたら消えてしまったのかも知れないのに―

「…俺は協力しねーから!」

「おい、作兵衛!!」

左門の引き止める声があっても気にしないように、くのたまの園内にある蔵から走って逃げた。

外は黄色い落ち葉が冷たい風で舞い上がっていた。

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