忍たま短編集

□2人で歩く道はまだ長い
1ページ/4ページ


外は暑くて暑くて、でもその暑さを感じない部屋で寝てる私。

隣にいる左近先輩は寒いだの言って、温度を上げていた。

お母さんもいないから怒られないが、私にはちょうどいいくらいだったのだ。

捻くれてると、一週間分の薬が置かれる。左近先輩のお父さんに頼まれて持ってきたらしい。

暑い中いつもお疲れなんだ、としみじみ感じる。

「左近先輩、いつもありがとうございます。」

「いいよ、いつもこの部屋で涼んでるし。
それより早く良くなれよ、お前は元々体弱いんだから。」

苦笑いを返して左近先輩にお礼を言うと、また少し溜め息をつく。

「外、走り回れればいいのにな。左近先輩、連れて行ってください。」

「冗談はそこらへんにしておいて、今日はずっと寝てろよ。悪化してるんだから。」

巧いように逃げられて少しムッとしたが、仕方ないことだと呑み込んだ。

確かに自分は体が弱く、病気がちである。
小さい頃は入院していて、今は退院したが本来なら高校一年なところを不自由な生活が続く。

そのせいなのかお陰なのか、この近くの医者の息子の左近先輩とは昔からの知り合いである。

因みに私は高校を通っていないのに、中学生の時のように先輩と呼んでいるのは、左近先輩からのお願いだ。
私には、その理由がよく分からない。

昔の友達は「すてーたす」とか何だか言ってたけど、違う気しかしない。

「先輩、帰っちゃうんですか?もう少し一緒にいてくださいよ。」

そんな事を考えていたら左近先輩が立ち上がるから、服の裾をガッと掴む。

「我が儘言うなって。
それに、これから用事があるんだ。」

またムッとして、ふくれてたら左近先輩が頭を撫でてくれた。

「また明日来てやるから、怒んなって。」

私はそれで、許してしまった。






左近先輩からもらった薬が切れた頃、ベットから起きて机に向かってずっと考えてた。

なので、ある作戦を遂行することにした。

まずは普段はほとんどパジャマな為、私服は棚から引っ張り出さなくてはならなかった。

風邪をひかないように、上着を一枚増やして少し厚着を用意した。

「先輩先輩せんぱーい!!」

「わぁっ…名前か、どうした?」

「今日、一緒に近くの並木道に行きませんか?」

「並木道って、あの川のとこか?
お前なぁ…倒れたりなんかしたらどうすんだよ。俺はいつまでも看病してやれねーぞ。
しかも名前、起きてて大丈夫なのか?」

「今は体調、スッゴくいいんです。
だから、外に連れて行ってくださいよ左近先輩!
一生のお願いですから!」

パンッと顔の前に手を合わせて必死に頼み込む名前を見て、左近は少し溜め息をついた。

「昼間は無理だけど、夕方か夜ならいい。お前にも涼しいほうがいいだろ?」

名前が目をキラキラ輝かせる。

「分かりました!夜に行きましょう。
すごく楽しみになりました〜!」

私の準備は、無駄にはならなかったのだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ