忍たま短編集

□僕はビタミンC
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朝から雨のせいで真っ暗に淀んだ空。

部屋の明かりは切られ、昼間というのに真っ暗になっていた。

(……いた。)

部屋の中に肩を震わせて小さくなっている子がいる。

静かに音をたてないように丁寧にドアを閉める。

近くの棚に救急箱を置くと、隣に腰かけて、少しだけ体を預けてみる。

「居る理由、聞かないの?」

「聞かなくてもだいたい分かるさ。」

小さくてか細い声に、自然と自分の声が優しくなる。

きつく考えすぎないで、とそっと心の中で呟く。ザァザァ雨の音が少し響いた。

「私は、わたしは、ただ」

「……。」

「彼が、好きなだけ。なのよ。」

「うん。」

名前が彼を好きなのは知っている。
僕も応援している。でも、たまに彼女は深く考えすぎておかしくなる時がある。

他愛もない一言が、人を簡単に追いやってしまう。

「カンチガイ、なんかじゃない。この愛は、確かなのよ。」

恋心なんて、目に見えないから好きなだけ疑える。無いという発想だってできるのだ。

そんな不確かなものを考えると、溜息がでた。

「名前は、彼が好きなんだろう?」

「伊作、当たり前じゃない。」

「彼のそばにいて、一緒に笑いたいんだろ?」

「えぇ、できるなら彼が欲しい。私のものにしたい。」

さっきのか細い声とは思えないくらいの、強い答え。
寸分の揺らぎなく真っ直ぐな彼女が少しだけ可笑しくて、そんな彼女が恋のことで悩んで。
見られたらなんて言われるか分かんないから、見えないようにこっそり笑った。

「恋心だよ、大丈夫。安心して。」

僕の頭がぶつかって 痛いわね、と反撃を受けた。

また雨の音がポツリポツリと地面にあたる音がする。

きっと今の彼女の目は、今まで以上に真っ直ぐになっているに違いない。

不安定な彼女を支えるのが、僕なりの応援だ。

僕はタミンC

「伊作―!」
「今日はなにかいいことあったの?」
「えぇ、髪型褒められたのよ!」
「おー、よかったねぇ!」

悲恋っぽくない悲恋。
伊作視点なので、伊作が恋心に気付いてないからかもしれないですけど。

因みにビタミンCは、傷を治したりする力があるらしいです。この話にピッタリかと…思ったのですが、どうでしょうか?

ここまで読んでくださり有難う御座いました!


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