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□寒がりの詐欺師
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「おーい、仁王〜」


屋上についてすぐに名前を呼んでみる


「…………」


「仁王ぉー」


「……………」


「仁王ぉーー!」


「……なんじゃよ、騒々しいのぅ」


声は給水塔の上から降ってきた


「つぎ体育だぞ、行かねーの?」


おれも給水塔に登りながら聞く


「ぉー…体育かぁー」


仁王はもふもふの毛布にくるまっていた


「体操服もってきたからよぅ」


体操服の袋を仁王に投げる


ぱすっと音をたてて丸まった仁王の腹にあたった


「おー…」


仁王は眠たそうにアクビをして目をとじた


「おぃっ!寝るな!!」


毛布をつかんでひっぱってみる


……が、


「う、動けよぉぃ」


ビクともしやがらない


「寒いじゃろ、俺ゃ行かんぜょ」


目をつぶったまま仁王が言った


「おっまっえー!高校行けねーぞっ」


「別にいいぜょ」


「良くねーだろっ」


頑なに動こうとしない仁王


「ふんぎーっ」


懸命に毛布をはがそうとする俺、


「…………」


「………………」


数分の無言の攻防の末


「………プリッ」


「おい、いつまで俺に引っ張られてんだよ
自分で歩け」


俺が勝った。

仁王を引きずりながら廊下を歩く


「もう始まっとるぜよ、行かんでもいいじゃろ…」


「ここまできて引き返せるかって!
一緒に罰うけてもらうぜぃ」


そう、チャイムはすでになり終わっていた
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