銀色図書館

□万事屋子育てだいありー!?
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江戸、かぶき町。


綺麗に晴れ渡った青空の下を、新八は万事屋へ向かって歩いていた。
万事屋リーダー代行“坂田金時”との一件からしばらく、街はすっかり元の空気を取り戻していた。
彼の事を忘れたわけではないだろうが、今はその名前を口にする人もいなくなり、街のみんなの中では『銀時のいる万事屋』が当たり前になっている様だ。
そして新八と神楽もまた、今回の件で改めて感じていた。ぐうたらでも、金欠でも、カッコ付かなくても…例え完璧なんかじゃなくても、一緒になって笑ったり怒ったりバカ騒ぎしたり、時に悪役になり、時に共に悩んでくれたり…そんな銀時(かれ)が中心にいてこその“万事屋”なんだと言うことを、そしてそんな彼だったからこそ、自分達は「この人に付いていこう」と思えるんだと言うことを。


やがて目的地にたどり着くと、新八は“スナックお登勢”の二階に掲げられた“万事屋銀ちゃん”の看板を目指して脇にある階段を登っていく。そして、


「おはようございまぁす!」


明るく元気な挨拶とともに、万事屋の玄関を開けた。
返事の代わりに返ってきた静寂をさほど気にする様子もなく、続けて事務所兼居間の入り口の障子を開けると、正面の窓からはとっくに朝の光が差し込んでいると言うのに、2人と1匹の姿はない。


「はぁ…まったくしょうがないな」


今や口癖の様になった言葉を小さな溜め息と一緒に吐き出して、新八は行動を開始する。


「はぁい朝だよぉ!神楽ちゃん起きて!」

「ん〜…」


押し入れを開けて中で寝ていた神楽に少し大きな声で呼びかけると、その新八の声に神楽はモゾモゾと身体を動かした。ここで更に「早く起きて」と声をかけようものなら、眠りを妨げた罰として暴言とパンチが飛んでくる事を知っている新八は、それ以上何も言わず、そのまま和室へと向かう。


「銀さん起きて下さぁい!朝ですよ!」


襖を開けて先程と同じ様に大きめの声で銀時に呼びかけるも、寝入っているのか反応がない。
これもまたよくある事なので、さほど気に止めることなく、新八はそのまま台所へと向かった。


朝ご飯の支度を始めてしばらく、新八が出来上がったおかずを居間に運び出したちょうどその頃、眠そうに目をこすりながら、ようやく神楽が起きてきた。


「あ、神楽ちゃんおはよう」

「うーっす…ふぁ〜…」

「朝ご飯、もうすぐできるから、早く顔
洗っておいでよ」

「ほぉい」


まだほとんど覚醒していない身体でフラフラと洗面所へ向かう神楽の背中を横目でチラリと見送り、新八は再び朝ご飯の準備に戻った。




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