御読ミ物
□忘れない
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(翔語り)
6年生になった俺は、今までに増してサッカーに専念していた。
「セリエAに行ってやる!」
これが俺の口癖だったんだ。
ところが、俺の夢は脆くも崩れ去った。
「・・骨肉種ですね。」
医師から言われた一言は、
小学生の俺の頭で理解できる内容ではなく、
後から父に聞いて分かった。
ひざに異物感を感じた。
それだけだったのに、病名が付いていた。
骨肉種、というのは
骨にできるおできみたいなもんだ、と父は言った。
手術をすれば治るものだ。
医師もそう言った。
「手術なんて、怖くもなんともねぇもん」
そう強がって入院した俺は
ぶっちゃけめちゃめちゃ不安だったわけで。
手術で足がなくなっちゃったらどうしよう、
とか
サッカーできなくなったらどうしよう、
とか
言われても無いことを勝手に想像しては
不安がって泣いていた。
「っく・・こえぇよぉ・・ぅっ・・」
相室の同じ年代の奴らに気付かれないように
俺は毎晩泣いていた。