御読ミ物

□最後の夜明け
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異変に気付いた日なんて覚えていない。


気付いたら、そうだった。




恋人の潤くんは、
付き合い始めの頃に比べると、全く僕の部屋に来なくなった。



うすうす、感づいてはいたんだけどな・・




どうしても、決心がつかなくて。




僕を求めて抱いてくれるたび、
君の嘘に甘えたくなった。



いつしか、
その嘘さえも僕の体には馴染んできて


一層、僕の心を掻き立てた。




でも、これで最後。



これで終わりにしよう。



そうしないと、僕・・・



壊れちゃいそうだよ・・



耐えられなかったんだ。
君の視線が、僕に当てられていないことに。

君の体から、僕の匂いが消えていくことに。


だから、


覚悟を決めて、僕は潤くんを誘った。



潤「なんだよ、お前からなんて久しぶりじゃん?」

シャワーを終えて、真っ白なバスローブに着替えた潤くんは、僕のベッドに腰掛ける。


和「そうですか?・・僕にだって、淫乱な気持ちになることくらいあるんですよ?」


僕は潤くんが来るずいぶん前にシャワーを終えていて、体は冷め切っているはずなのに、
潤くんのその姿を見ただけで、腰の奥がズンと重くなるような気がしていた。



潤「和・・おいで?」



両手を広げて、僕を迎える仕草をする。



和「ん・・・」



腕の中に包まれて、優しい体温を確かめる。



潤「なんかお前・・今日ヘンだよ?熱あんじゃねえの?」


潤くんは自分の額を僕のおでこに近づけて、
静かに目を閉じた。


反射的に、僕は潤くんの唇に吸い寄せられる。



―クチュッ・・チュパッ―



わざとらしく音を立ててみる。


だって・・最後だから。



目でも耳でもなんでもいい。
この体に、潤くんを焼き付けておくんだ。
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