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□青春を嗤って
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「吉井先生の、・・・ほら、あの黒板に文字を書いた後にトントンってチョークで二回叩くやつ。あれが好き。」
大好きなイケメン先生、吉井先生の数学の時間、隣の席の友達にこんなくだらないことを言った。
「知らんわっ。」
ああ、ごめん。
でもどうしてもこの想いを誰かに言いたかったんだ。
あ、これは何フェチと言うんだろう・・・?
またくだらない疑問が頭に浮かんで、そしてまたこりずに友達に話し掛けようとした。
その時。
「じゃあこの問26。えー・・・仁王。仁王雅治。前で解いてみて。」
「はい。」
と、先生の指名の声で断ち切られた。
その指名された仁王くんは前にゆるゆると出て来て、いとも簡単にすらすら答えを書いていった。
びっくりだ。
仁王くんが数学が得意なことは知っていたけど、まさかここまでとは。
ほかの教科は結構居眠りしてるのに・・・・・・な・・・・・・
「あ、」
トン、トン。
最後にやった。
確かに、二回。
クラスからドッと笑いが起こる。
「なんだよ仁王ー。吉井先生の真似かよい。」
「似てる似てる〜。」
がやがやと、教室はゆるい雰囲気に包まれた。
わたしもつられてフッと笑ってしまう。
「まさか・・・ね?」
仁王くんが数学だけ抜群に得意なのはまさか・・・。
とかね。
ああ、ほんと。
自分に嗤っちゃう。
じわじわと熱くなる頬を、教科書でそっと隠した。
おわり