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□嘘を吐く
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「・・・おはよう、景吾。」


「ああ、起きたか。仕度しろ。もう行くぞ。」


「うん。待って。」



そばに脱ぎ捨てられていた景吾の大きなシャツを羽織り、ごそごそと自分の制服を探す。



「あれ?ない。」



まさかと思い、ちらりと横のテーブルを見ると、予想通りわたしの制服が綺麗にたたんで置かれていた。

昨日景吾に床へと剥ぎ落とされたはずなのに。

自然に向こうのテーブルで朝食の準備をしているお手伝いさんに目が行く。



ニコッ



かわいい笑顔でほほ笑まれたから、条件反射で笑う。

きっと顔はひきつっているけど。


お手伝いさんに制服をたたんでもらったとか恥ずかしい。

しかも私たちがハダカで寝ている時?に。



「あ、時間やばいや。」



わたしはとにかく制服を着て、軽くお手伝いさんにまがって跡部邸を後にした。










「おはよう、みょうじ。」


「あーおはよう。」


「今日制服めっちゃ綺麗だね。クリーニングにでも出したの?」


「あー・・・。うん。まあ。」


「あ、跡部くんでしょ。昨日やりおったな?」


「ははは。」


「愛されてるねー。許婚とかうらやましいよー。」



・・・“愛されてる“


のかな?

景吾の口からは愛してるなんて聞いたこともない。

わたしが許婚であっていいのか、少しだけ不安になった。

だから、仕掛けてみたんだ。












「帰るぞ。」



ある日の放課後、いつものように景吾が教室に迎えに来た。

一緒に帰るのが日課だ。



「うん。あ、ねえ景吾?」


「なんだ。」



「わたしね、妊娠した。」



ドンッ

前を歩く景吾がいきなり止まるから、顔が思い切り景吾の背中にぶつかった。

・・・痛い。



「ほんとか?」


「うん。ほんとに。」



あなたは、どうする?



一瞬、ほんとに一瞬だったけど、景吾があまりにも嬉しそうな顔をしてくれたから、この人と結婚したいと思った。






(アナタニ)嘘を吐く


あれ?検査薬が赤って陽性だっけ?

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