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□それは正義
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「好き、です。付、き合って下さい。」
ああ、最悪だ。
こんなぎくしゃくした告白になる予定ではなかった。
昨晩した2時間半の練習の成果がこれとなると、さすがに羞恥心よりも自分への失望感でいっぱいだ。
まあ、
それくらいこの人が格好いいっていうのも、無きにしもあらず。
ねえ?
「仁王先輩。」
「・・・すまんの。今は誰とも付き合う気がないんじゃ。」
「あ、いえ。わかりました。ありがとうございます。」
やはり人生は何でもかんでもうまくは行かないものだなあ。
ペこりと会釈をして、その場を後にした。
ドンッ
と背中を冷たい屋上の壁に打ち付けたのはその日の放課後。
わたしが先輩に告白していた現場を見られていたらしく、それでわたしは生意気だと顔も知らない女子の先輩方に包囲されている。
まったく今日はなんなんだ。
「みょうじさんってずっと生意気だと思ってたんだよねえ。」
「あのさあ、もうちょっとおとなしくしてた方が身のためだよ?」
・・・などなど。
いや、あの、わたしこんなことしたの初めてなんですけど。
「どうする?一発殴っとく?」
え、やだ。
と、抵抗する前にもうその人はわたしのむなぐらを掴んで一発。
テニスコートから誰かが見ていた気がしたが、痛みでそんなことはどこかに飛んで行った。
「いったー。」
最近の先輩方は恐ろしいことを今日知った。
平手打ちされた左頬が、まだじんじんと痺れている。
いつも夏場はぬるく感じる水道の水も、今はほどよく頬の熱を冷ましてくれて気持ちいい。
「さあて、帰りますか。」
キュッと蛇口をしめて振り向いた。
「お前さん、何じゃその頬。」
「に・・・!」
仁王先輩!
あれ、今部活中じゃ?
「聞いとるん?その頬どうしたん。」
「えっと、まあ屋上でいろいろと・・・。き、気にしないで下さい!では!」
「待ちんしゃい。」
ぐいっと右手を掴まれた。
はあー。
っと先輩は一息。
「これじゃせっかくの告白を断った意味がないぜよ。」
そう言って、先輩は屋上へ駆けて行った。
右手が熱い。
顔が熱い。
ああ、まさか
あれは正義だったと言うのでしょうか。