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□GOD BREATH
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「え?」
お母さんが何て言ったかははっきり聞こえた。
いわゆる条件反射で聞き返してしまっただけ。
『転勤するの。何度も言わせないで。』
会社から帰ってきたお母さんは、こちらをちらりとも見ないでこんなことを言い放った。
この人はほんとにわたしの母親なのだろうか。
まったく、こんな人にはなりたくないものだ。
「・・・つまり、転校ってことだよなあ。」
ひとりきりのリビングに、わたしの声が虚しく響いた。
「おはよう、永四郎。」
「おはようございます、みょうじさん。」
「あ、わたしね、転校するんだ。」
「・・・朝から何の冗談ですか、“みょうじ“。」
「わたしがこんな冗談言ったことある?」
「今言いましたよ。」
「へりくつ。」
永四郎とは幼稚園からずっと一緒。
中学にあがると、いつからか永四郎はわたしをさん付けで呼ぶようになり、急に深いみぞができた感じがしてた。
なんだ。
ちゃんと前みたいに呼び捨てで呼べるじゃん。
「・・・あなたは、僕の性格を知っていますよね。」
「めっちゃ悪い。」
「絞め殺しますよ。」
「うそだよ。めっちゃわがまま。」
子供みたいにね。
「じゃあ、行かないで下さい。」
「出た。お子さま永四郎。」
「お子さまでいいですよ。」
ガタン、と永四郎が立ち上がった。
「・・・・・・永四郎、ここ教室。」
「誰も見てませんよ。だからもう少し、今日だけ、許して下さい。」
教室の隅。
永四郎はわたしに抱き着いて、静かに泣いた。
god breath:
(愛を込めて)さようなら。
「好きでしたよ。」