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□月に溺れる
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「向日のユメってなに?」


「宇宙飛行士。」


「・・・うそ。」


「うん、うそ。まだ決まってねえよ。」


「へえー。」




いつだったか。

こんな会話をしたのは。

でも向日なら宇宙まで跳んで行けるよって思った。

また向日と距離ができるねって思った。


「向日ってなんであんなに高く跳ぶの?」


体力ないくせに。


「見えるから。」




コート全体がってことだろうか。


「景色とか、友達とか、音楽室の榊監督とか・・・」


「くだらない!」


「うっせ!いいんだよ。俺がみたいんだから。」


「ふーん。」


榊監督をみたいとはまた変わった人だ。


「おしゃべり終わりー。俺は練習戻るわ。お前も帰宅部なんだから早く帰って勉強しろ。」


「わかってますってー。」


校門まで鼻唄を歌いながら歩いた。

向日と話せたし。




ターン、ターン




遠くでは軽やかにリズムを刻む音。

ああ、向日が跳んでる。

空を見上げれば今日も気持ちよさそうに跳んでるんだろうな。

あ、ほらね。





この時向日と目がバッチリ合ったのは、彼がいつもわたしを見ているからだろうか。


とかね。

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