連載2
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わたしは、わたしだよ。
corruption.12
「小夜子はどうしたい?」
「総理大臣になりたい。」
「・・・真顔で言うお前は素晴らしいな。そうではない。これからの生活だ。」
「生活?」
「ああ、もう一人暮らしではなくこの家に戻って来てもいいんだぞ。」
「・・・そ、っか。」
そういえばこの立派な家ってわたしのなのか。
・・・いやだからこれ自慢じゃないよ?だってほんと立派なんだもん。
「わたしは・・・。」
でもわたしは―――
「この家には住まない。」
「・・・。」
「わたしは、まだ全部の記憶を取り戻した訳じゃない。失礼だけど、だからこの家は今のわたしにとって窮屈すぎる。あ、窮屈ってのは気持ちね?気持ち。敷地とか最高だから。」
え、柳くんその「知ってるわ」みたいな顔やめて。いや、今の発言が空気読んでなかったのは謝るから。
「えーっとだから、わたしは住まない。」
「そうか。」
「それに、わたしはまだ柳くんを好きでいたい。」
わかってる。
いつかさよならなんて、わかってる。
「まだ・・・柳くんの恋人でいさせて下さい。」
「・・・もちろんだとも。」
その優しい手。
綺麗な顔。
落ち着く香り。
全部――忘れない。
(大好きだった。)