最遊記

□dew drop 6
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5年振りに見たアイツは、あの頃よりも儚げに見えた。



瞼の裏に焼き付いていたのは10歳の少年。
真っ赤な髪は幾分か伸びて。
顔立ちも大人へと近くなってきていた。
相変わらず大きな瞳は、今こちらを見つめ更に大きく見開かれている。





会いたかった。





そんな言葉では言い尽せない感情が急き立てる。
初めて足を踏み入れるこの部屋は、コンクリートと、ほんの少しの薬品の匂いがした。

何度この時を夢に見たか。
艶やかな髪に指を絡ませ、柔らかそうな、けれども青白い肌に触れるのを。
その小さな体をこの腕で抱き締めることを。
痩せすぎの身体を、それこそ折れてしまうのではないかと危惧する程きつく腕の中に納める。
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