最遊記
□dew drop 5
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健康状態の確認。八戒が悟浄に付いてから任されるようになった仕事だった。
いつもと同じ様に鍵を開けてガラスに隔てられた部屋に入る。
けれどもその目的はいつもとは違った。
「悟浄、貴方に話しておかなければならないことがあるんです」
そう告げた八戒の顔が、穏やかではあったが少しこわばって見えたのを悟浄は不審に思った。
そういえばあの時もこんな感じだったなと、ふと思い出す。
三蔵と最後に言葉を交したあの時と同じだと。
ベッドの端に腰かける悟浄の前に、八戒は膝をついて座り目線を合わせる。
「本当はね、ただ院長を失脚させることだけなら簡単だったんですよ」
優しく言い聞かせるような八戒の声に、何の話か疑問に思いながらも悟浄は黙って聞いていた。
「少年を監禁して、怪しげな研究をしているとマスコミに流せば、すぐにでも貴方は自由になれた」
何故今、そんな話をするのかとか、だからどうしただとか。
耳に入ってくる情報と、思考とが頭の中でぐるぐると回る。
「それをしなかったのは…貴方を人目に晒したくなかったからなんですよ」
世間の目は変態の院長よりもむしろ“禁忌の子”に向けられるだろう。
悟浄は、あらゆる中傷に晒されることになってしまう。
「だから彼は戦ってたんです」
八戒の肩越しに、見える人物に目を疑う。
とうとう幻覚が見えるようになったかと。
だって有り得ない。