最遊記

□dew drop 3
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外界からの音を遮断した建物に自分の足音だけが虚しく響く。

この隔離された棟に独りきりでいる少年のもとへ、三蔵は一歩一歩近付く。


これから彼に告げる残酷な言葉を胸に抱えて。







既に日課の様になってしまった検査を終えると退屈な時間が悟浄を襲う。
それでも口喧しい研究者達に居座られるよりはマシかと、悟浄はベッドに横になった。



暫くして、眠ろうとした悟浄の耳に聞き慣れた声が届いた。

「悟浄」

閉じていた瞼を開け、勢い良く身を起こして首を曲げる。
目に入った人物を確認して、悟浄は嬉しそうに笑った
「三蔵…」
「元気か?悟浄…」
「――うん」

ベッドから飛び降り、パタパタと三蔵のもとへ駆け寄る。
そんな子供らしい仕草に、三蔵もフッと笑みを漏らす。
普段から気丈に振る舞い、子供らしさを見せまいとする悟浄のそういった一面を見られるのは三蔵としても嬉しい。
だが、今日の三蔵は手放しで喜べる程心穏やかではなかった。

「三蔵…?」

三蔵の微妙な変化に気付いたのか、悟浄が心配そうに見上げてくる。
決心が鈍る。
悟浄に言わなければならない言葉が出てこない。

「悟浄――」

深く息を吸い込んで名前を呼ぶ。

自分を落ち着かせる為に。
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