最遊記

□dew drop 2
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俺は何のために生まれてきたんですか?



誰かに聞かずにはいられなかった。







『生殖能力を持たない』


生き物としての役割を持っていないという事。
事故ではなく、病気でもない。
もっと根本的な、遺伝子レベルでの問題。
それはまるで自然界からの拒絶。
在ってはならない存在、それが俺なのだともう何度聞かされただろう。

突然変異で生まれてくる禁忌の子供。
原因は未だ解明されていない。





時々院長が”お気に入り”を連れてやってくる。
ガラス越しに俺を指差して「珍しいだろう?」だの「高値で手に入れた」だのお決まりの台詞で自慢を始める。そして大抵皆俺を物珍しそうに眺めてそれで終わり。
見世物と研究材料。
それがここで与えられた俺の役割。

だからアイツもそうなんだと思った。



綺麗な金髪が印象的で、柄にもなく見入ってしまった。
きっとまた好奇の眼をむけて嘲笑うのだ。
哀れな生き物を見るように。
だけど目に入ったのは驚愕の色を濃くした綺麗な顔。
紫色の瞳に宿るのはーーーー怒り?そう、怒りだ。

何故?何に?

結局一言も発しないまま場を立ち去った男がその後やけに気になって、もう一度会いたいと取り留めのないことを思った。
会ってどうするかなんて考えてないし、第一在り得ない。
ここに二回目以降足を踏み入れられるのは禁忌の子の研究に携わる者だけ。
その他の者に二度目はない。





なのにアイツは来た。
初めて来た時と同じような無愛想な顔をして。
「三蔵」という名前だと、その時に教えてもらった。
やって来る回数が増えるたび、会話も増えた。
いつだったか、リンゴが好きだと言ったら、次の日の食事にリンゴが付いてきた。
アイツだ。そう思ったら、なんだか泣き出したい気持ちになった。

俺の言葉を聴いてくれる人がいて、それに応えてくれる。
俺の言葉が言葉として伝わっている。
そう考えると、たまらなく嬉しかった。


俺は今確かにここにいる。


アンタの目に映って。俺の声が届いて。


いつの日か記憶として残っていくんだ。









「うみ・・・?見たことない」
「いつか見せてやる」



途方もない願いだね・・・。



「うん。待ってる」
「悟浄」
「何?」
「・・・・・いや、何でもない」



何のためになんて、答えは出せないけど。



「また来る」
「うん」



アンタに逢えて。



よかったって思えるんだ。



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