最遊記
□カルマの坂
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宿へ着いた三蔵一行がまずする事と言えば、翌日の出立の為のルート確認だろう。
だがそれは、三蔵と八戒が行う作業であり、別室で待機している悟浄と悟空には全く関係のない時間だった。
「なぁ〜、暇〜」
「うるせぇよ子猿」
こんなやり取りをもう何度してきたか。
いつもであれば、文句をいいつつも面倒見のよい悟浄は元気の有り余る悟空に付き合い、プロレスなりカードなりで三蔵達が戻って来るまで遊んでやっていた。
しかし、連日の強行軍で疲れきっていた悟浄は、ベッドへ寝転んだまま動く事が出来ないでいる。
悟空には申し訳ないが、ここから更に体力を消耗させる気にはなれなかった。
「んじゃぁさ、何か面白ぇ話してくれよ」
「話だぁ?」
何度かねだってはみたものの、起き上がる気配のない悟浄に、悟空は妥協案を提示した。
「話なら口動かすだけでいいじゃん」
「何だその言い草…。じゃぁお前がしろよ…」
「俺に面白い話出来ると思ってんの?」
尤もな意見だと悟浄は思った。
悟空の事だ、その日その日起こった事を日記のようにダラダラと話して、揚句オチがないなんて事は安易に想像できる。
深々と溜息をついた。
「………あんま面白くねぇかもしんねぇぞ」
暇を持て余している悟空に、体力的に付き合ってやれない事を、ほんの少し気にしていた悟浄はその妥協案を受け入れた。
悟空に付き合う義務など悟浄にはありはしないのに、そういう所がお人好しなんだと、八戒がいたら呆れたに違いない。
暫く考え、悟浄は一つの物語を話しだした。