最遊記

□隣人@
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【隣人:1】



三蔵は不機嫌だった。

空は快晴。
窓を開けて新鮮な空気を部屋に迎え入れ、大きく伸びをして爽やかな気分に浸る。
そんな行動を取りたくなるほどの清々しい天気であるのに。
誘われるようにベランダへ出てみたものの、そんな気分にはなれずただただ煙草を燻らす。

寄せられた眉間のシワの原因は、隣に住む一人の男にあった。

三蔵の越して来たこの高層マンションは、三蔵の好みに合った静かな場所。
近所付き合いが嫌いな三蔵は同フロアに住んでいる人物や名前さえ知らない。
なのにそんな自分の生活に突然割り込んできた紅い髪の男。

「あれ、三蔵。今日仕事はー?」

隣のベランダから聞こえて来た声に眉間のシワが深くなる。
額に手を当てたまま、ここ最近の不機嫌の原因に目線だけを向けた。
ベランダの手摺りに寄り掛かって、声の主は眠たそうな目でこちらを見ている。

「何の用だ、悟浄…」
「用がなきゃ声かけちゃいけねぇのかよ」
「貴様に限りな」
「冷てーの。で、今日仕事は?サボり?」

睨んでもへらっと笑うだけでなんの効果も示さない。思わず溜息をついた。
いつもこんな調子で自分のペースが乱される。
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