最遊記

□dew drop 3
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「今までやってきた研究が認められてな。5年程…アメリカの病院に行くことになった」



真っ直ぐ悟浄の目を見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
それを驚く様子も見せずに悟浄は黙って聞いていた。
二人の間に沈黙が訪れる。お互いの視線は合わさったまま。



「――そっか…」



どれ程の時間が経ったか、悟浄がぽつりと呟いた。

「アメリカか…遠いな…」
「5年経ったら戻ってくる」
「うん……待ってる」

三蔵の言葉を受けて、悟浄は応えと共に綺麗に微笑んだ。
その様子に、三蔵の表情が曇る。
拳を、白くなるまで握り締めた。

「………嘘じゃない」
「三蔵?」

絞り出すような三蔵の声に、悟浄は首を傾げた。

何故そんな顔をするのかと。

「お前が『待ってる』と言う時は…何も期待してない時だ」
「―――っ!」

初めて悟浄の瞳が困惑に見開かれる。怯えの色を濃くして。

知っていた。
悟浄が生きる事を諦めていると。
こうして会うこの時だけが、悟浄を「生」に繋ぎ止めていると。

「必ずお前の所に戻ってくる。だから…生きていろ」「……ぃやだ……」

今にも泣き出しそうな顔で何度も首を横に振る。

「悟浄」
「俺に待てって?ここで?」
「悟浄…っ」
「いやだよ、冗談じゃねぇよ!ここに居ても未来なんか見えねぇんだよ…!こんな所で生きていけって…?」

毎日聞かされる呪いの言葉。
歪められた口許。モノ珍しそうな目で、欲望の対象として見られる屈辱。
白一色のこの景色しか知らない。
それでもまだ生きろというのか。


アンタが目の前から消えたら、俺が生きてる理由なんかないんだよ。

死なせてもくれないの…?
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