最遊記

□キスくらべ
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目の前の光景を、どう受け止めればいいのか。
判断もできないまま、三蔵は立ち尽くすしかなかった。


八戒と悟浄がキスをしていた。


初めは触れ合うだけの軽いものだったが、次第に唇を甘噛み、啄んでいく。
八戒の両手は悟浄の頬を包み込み、悟浄の手は八戒の腰へと回された。
合わせた唇の隙間から悟浄の吐息が漏れ、ぴちゃりと水音が聞こえ始めた。
しつこいくらいに舌を絡ませ、時折悟浄は苦しそうに眉根を寄せる。耐えるようにきつく八戒の服を握ると、その反応に気を良くしたのか更に口付けは深くなっていった。
卑猥な空気が部屋全体を包む。
偶然か、それとも態とか、中途半端に開かれた扉の隙間から見てしまった二人の戯れ。
声を上げる事も、立ち去る事もできずに、三蔵はただただ見入っていた。




「―――お前ら、付き合ってんのか?」

あの衝撃的な現場を目撃して以来、三蔵はもやもやとしたものを抱えていた。
それは八戒に対してなのか悟浄に対してなのか、それが嫌悪なのか単なる驚愕なのか、何一つ整理できないでいる。
久しぶりに宿屋のある町に辿り着き、幸か不幸か悟浄と同室になったのを機に、三蔵はとうとう長らく滞留していた胸のうちを悟浄へぶつけた。

「は?何が?」

三蔵の問いかけに、いまいちピンと来ていない様子の悟浄に苛々した。
出来る事なら察して欲しかった。
口にする事は憚られる気がして、それがまた情けなく感じる。

「だから、お前と八戒がだ」
「え?は?何で?てか、どーしたのよ三蔵サマ」

意を決して問えば、キョトンとした深紅の目が三蔵を見つめてきた。
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