短編集

□たとえ貴方が忘れても
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夢をみた


昔の、優しかった山南さんと、私の夢―――





「私はもう、人間ではありません」


なんてことを、いつもの、でもなんだか淋しそうな笑顔で言った


『山南さん…まさか……!』


羅刹になった、ってこと……?


「ふふ……心配しなくても、貴方を殺したりしませんよ」


『そうじゃなくて……!』


私は混乱して、なにがなんだか分からなくなってしまって……


「泣かないでください、ゆのさん」


泣かないで、なんて、無理に決まってる


『なんで……なんで……?』


私はそれしか言えなかった


「私は、《新選組》です」


力強く言った山南さん


私はその一言で、山南さんの言いたい事を理解した


「分かっていただけて、なによりです」


山南さんは、言葉を選びながら続けた


「これはお願い……というより、命令ですね」


山南さんが、真面目な顔になって……


私は嫌な予感がした


「ゆのさん……この先もし、私が貴方や他の隊士に、剣を向ける事があれば………」









私を殺しなさい








『え?』


なに?なんていったの、山南さん





――行かないでください





――待って




手が届きそうなのに…




私が手をのばすと、山南さんはどんどん離れていく




――山南さん……!





『山南さん……!』




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