50万hit企画部屋

□〜ジェダレイ編〜
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背を向けてしまった彼女は少しの沈黙の後ぽつりぽつりと話し出した。

「話してたでしょう?可愛い女の子と。」

「え?女の子?」

「今日の昼間。駅前で。なんだか瑛二さん知らない人みたいだったわ。」

言われて思い出す。確かに大学のクラスメートに偶然会ってなんてことはない会話を交わした。それだけだ。

「声掛けてくれればよかったのに。」

「何で私が声掛けなくちゃならないのよ。」

「何でって…」

「楽しそうだったから邪魔しちゃ悪いと思ったの。私だって用があったし。」

「レイさ…「帰ったら?」

これは。いくら俺でも分かる。様子がおかしかったのは全部そのせいだったのか?

止まらない衝動のまま、彼女の上に跨がり両肘を付く。突然囲われた状態に目を白黒させた彼女が見上げてきた。

分かったらもう、目の前の恋人が可愛くて仕方なくて。一気に箍が外れてしまった俺は彼女の漆黒の髪を一束取って口付けた。

「ちょっと、何っいきなり…」

「レイ…やきもち?」

「…っ」

その時にしか呼ばない言い方で問えば、彼女は真っ赤になって顔を背ける。伏せられた睫毛が震えて。俺はその瞼に唇を落とした。

「嬉しい。」

「別に私はあなたを喜ばせたくて言ってる訳じゃ…っ」

キスをすると酔いのせいかいつもよりもその感触は熱くて、それに引き寄せられるかのようにすぐに深いものへと変わる。
抵抗は無かった。だから嬉しくて夢中に彼女の感触を味わった。

唇を離した頃には互いの息が上がり、絡み合う視線も濃度を増していた。

「ねえ、レイ。」

「な…に?」

「俺はレイしか見てないよ。」

「帰ろうとしたじゃない。」

「だって、レイにその気が無いのに襲ったりしたらまずいと思って。」

「…」

頬を撫でるとこちらに目を向けた彼女に微笑む。

「だけど、もうやめない。いいよね?」

「……勝手に…しなさいよ…っ」

背中に回された腕の力強さが彼女の意思を物語る。

付き合って数年。最大級の甘えたその行為に完全に舞い上がった俺は、暴発する想いを全て伝えるかのように唇を重ねた。





―――

「だけど…狸寝入りなんて、レイさんもするんだね。」

横にいる彼女の髪を指に絡めては解いてを繰り返していた俺はふと溢した。

俺の間違いでなければ、抱き上げた時から意識があった。そして次の彼女の反応がその事実を裏付ける。

「う、うるさいっ!あなたこそあの状況で帰ろうとするなんて意気地が無いわねっ」

「だから、そうじゃないって言ってるのに。」

「知らない。」

ぷいっと再び背を向けた彼女の耳は真っ赤だった。

「あー…だめだ。」

「何よ。」

「レイさんが可愛くてしょうがない。」

「はぁ!?」

「好きだよ…」

後ろから抱き締めるとその心地よさに急激に眠気が襲ってくる。俺もそれなりに飲んだから酔いも回っているのだろう。

眠りに落ちる間際に、彼女の手がきゅっと腕を掴む感触がして。

―私も…―

俺が寝てると思って言っただろう彼女のその言葉が

まるで甘い子守唄の旋律のように心に落ちてきた。







おわり
2014.7.3
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