連載

□月からの花嫁
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発端



月と地球。今までは相互の干渉はタブーとされていた。

でもこの私、クイーン・セレニティの先代、母のころからその均衡は徐々に崩れていった。

その大きな理由は月の王家に代々伝わる聖石、幻の銀水晶の力が徐々に弱まってきたからだった。

皆が平和に長寿を全うして穏やかに過ごすことを願い続けてきたけれど、それも必要なくなってきたということだろうか。


母はそのころの平均寿命の千歳には及ばずその半分ほど生きたのち私に力を託して世を去った。

私はおよそ二百年の歳月を生きてきたが、人間で言えば60を過ぎたあたりの老化を感じてきている。見た目は変わらずであっても、その変化は私自身がよく分かっている。多分この先はそう長くは生きないだろう。

けれど月の民は徐々に縮まっていく寿命の事を憂いている様子はなかった。皆、生きていく中で喜びや幸せを掴んでそれを育んでいけるのならば、この星の歴史の変化も甘んじて受け入れようとしているように思う。

神は、私たちも人として生きよと。そう告げているのだろうか。


地球国に住む人々と同じように。
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