短編D

□Happy Birthday dear...?(衛クイーン)
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真っ赤になって怒るあなたが貸してくれたのは彼のシャツだった。

「こんなものしか無くてすみません。今、ちびうさ…スモール・レディに電話して事情を話してくるので。クイーンはとりあえずそれを着ていてください。」

「スモール・レディに!?」

娘の名を聞いて胸が弾む。再び修行に出してからはもう一年近く会っていなかったから。

「はい。ここに来てもらいます。うさこの着替えも持ってきてもらうように頼みますから。安心して待っていてください。」

そうやって微笑むあなたを見て胸がきゅっとなる。おなじだけど、違う。あの人とは。だけど……あなたの優しさはずっとずっと変わらないのね。


「ありがとう、まもちゃん。」

私がそう呼んだことに目を少し見開いた彼は、今度は寂し気に目を細めて返事をするとドアを閉めた。

きっとあなたも同じことを思っているのだということが分かったわ。





そのあとスモール・レディと再会して嬉しくて嬉しくて声を上げて喜び合った私たちをあの人と同じように笑って見守っている彼の姿を見て、また胸が少女の時のように鳴る。

そうだったわ。私、こんなふうにまもちゃんのこと、どんどん好きになっていったの。



まもちゃん。ここでの彼はまだ高校三年生だった。若いはずだわ!!それを聞いてついでに今何月何日なのか尋ねて更に仰天した。

「6月30日!?」

「はい。そうなんです。だからあっちの俺…いえ、キングもあなたがいなくなってすごく心配しているのではないでしょうか。もちろん、三十世紀の日付が今日と同じではない可能性もあるとは思うのですが。」

「いえ、いいえ!確かに今日は三十世紀でも私とスモール・レディの誕生日よ。」

大変な日にタイムリープしてしまったことに困惑する私は、かつてお気に入りだったワンピースの裾をきゅっと握った。

スモール・レディが持ってきてくれた着替えの中に、まもちゃんがデートの時に選んでくれた大好きだったワンピースを見付けて胸が熱くなって踊るように袖を通したのはほんの数十分前。私の前には彼と娘が用意してくれた20世紀の朝の美味しい食卓が広がっていたのだけれど、エンディミオンの事を思うと心の隙間に風が吹いたように痛んだ。

スモール・レディが今この時代に修行に出ていて、その上私までこちらに来てしまったらエンディミオンは一人ぼっちだ。もちろん、パレスにはヴィーナスたちや、他にもたくさんの人はいるけれど、私たちは三人で家族なの。

きっと、とても寂しい思いをさせているわ……


「ママ…」

「あ、ごめんなさい、スモール・レディ。」

「ううん。パパのところ、戻りたいのよね?」

「ふふ、大丈夫。きっとすぐに戻れるわ。まもちゃんも協力してくれるって言ってくれたしね。やっぱりいつの時代もパパは変わらないわ。とーっても、優しい。」

「もう。ママったら。」

私は大事な娘をぎゅっと抱きしめた。

「私、大事なことを言っていなかったわ。スモール・レディ、お誕生日おめでとう。」

「ママ…っありがとう!ママも、お誕生日おめでとう!!」

「ありがとう。嬉しいわ。こうして今年もお祝いが言えて。」

「良かったな、ちびうさ。」

にっこりと微笑む彼に娘は大きく頷いた。





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