短編D

□🎃TRICK TRICK TRICK!🎃(まもうさ)
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チャイムを鳴らした後、うさぎはそわそわと愛しの恋人の玄関の前で待機していた。

今日はハロウィン。うさぎは魔女のコスチュームに身を包み、お菓子を入れられる小さなかごを下げていた。

カチューシャのトップについている三角帽子にはジャックオランタンのマスコットが付いていて、服装は黒をベースにオレンジ色の半袖口。かわいらしく胸元に編み込まれた紐は紫で、たくさんのフリルの付いたミニスカートにオレンジと黒のストライプのタイツとブーツ。それら全てハロウィンカラーで統一されている。

今日までに課題を仕上げると言っていた衛はきっとこのイベントの事は気付いていないだろう。今から行くと電話で直前に話した時も、ちょっと今は立て込んでて迎えに行けないけど気を付けて来いよ。といつもの調子で返されたのだから。

(まもちゃん、びっくりするかなぁ♪)

玄関の戸が開くと同時にうさぎは弾けるような声でこのイベントの決まり文句でこの部屋の主を見上げた。

「トリックオアトリー…!!??」

「こんばんは、魔法使いのお嬢さん。」

「ま、まも…っ!!??」

「さあお菓子をどうぞ。」

「へっ!は!ありがとうございます!」

可愛らしくラッピングされたキャンディを差し出されて動揺のままに受け取る。

衛はタキシード仮面のマスクとうさぎのものと同じようなマスコットの付いたハットで、ヴァンパイアのコスチュームを身に纏ってマントを片手で広げて微笑んでいた。

まるでうさぎの魔女と合わせたかのように黒とオレンジとパープルでコーディネートされたその衣装は、衛によく似合っている。
しかし余りにも予想外の展開にうさぎは真っ赤になって立ちすくみ、時が止まったかのようにヴァンパイアな恋人を凝視していた。

「……えーと、うさ。早く入ってくれるか。」

「うわっっあああはい!!」

どうやら素に戻ったらしい衛はマスクを外して照れていることを隠すように目線をずらしてそう言うと、パニック状態のゆで蛸な可愛すぎる魔女を部屋の中に招き入れた。

そう。今日のうさぎは可愛すぎた。ので、血…ではなく恋人を補給するために長身のヴァンパイアが彼女をすぐさま抱き締めて首筋に唇を寄せてしまうのは仕方のないことだった。

「あ、あのっまもちゃん!その格好どうしたの…?」

衛から突然の抱擁と首筋に落ちた唇の感触にドキドキしながらもしがみつきながら聞くうさぎに、溜め息を漏らして事のあらましを伝えた。

「晃たちだ。あいつら、たまにはこのイベントにしっかり参加しろだの言って。この衣装とキャンディ持って昨日押し掛けて来たんだ。賢人は絶対やらんとか言うくせに、それを指摘したら『うさぎさんはきっとこういうイベントをしてくれる恋人の方が喜ぶぞ』とやたらといい笑顔で返して来るから…。
しかも晃からは『この衣装はうさぎちゃんが選んだ店と一緒ってまことも言ってたから間違いない!』って肩思いっ切り叩かれて。リサーチしすぎかよ。
ああ、キャンディは要と瑛ニが買って来た。俺はうさと食べようと思ってかぼちゃ料理を昨日から色々作ったんだけど大量に作り過ぎちまって。あいつらにも分けてやったら満足して帰っていったよ。ったく、イタズラもしてご馳走も持っていくんだもんな…ちゃっかりしてるだろ?」

「あはは…た、大変だったんだね…
でも、ホントにびっくりしたよ。まもちゃん課題って言ってたから!」

「やっぱりサプライズなんて慣れないことするもんじゃないな。」

マントを脱ごうとする衛をうさぎは慌てて止める。

「そんな事ないよ!すっごく嬉しい。ヴァンパイアのまもちゃん、かっこいい!!」

必死にそう言ってくれるうさぎが可愛くて、衛は両手で腰を抱き寄せ微笑んだ。

「うさも、可愛いよ。」

赤いカラーコンタクトが入った衛に至近距離で見つめられるのが初めてのうさぎは、まるで本物の吸血鬼に魅入られてしまったかのように頬を染めて動けない。

「ところで俺も今日は言っていいんだよな?TRICK or TREAT?うさ?」

「え、あ!じゃあこれ…」

「それは俺があげたやつだからダメだよ。」

今日は自分が強請りに来るつもりだった為お菓子は用意していなかったうさぎ。つまり…

「イタズラ決定だな。」

「えっ!?」

あっという間に塞がれた唇。キャンディよりも甘いうさぎとのキスを衛は何度も角度を変えて味わっていく。




本日のハロウィンナイト。お団子頭の可愛い魔女が黒髪の見目麗しいヴァンパイアに美味しく頂かれてしまいましたとさ。めでたしめでたし☆






2016.10.15

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