お題
□16・好きならそう言ってよ(クン美奈)
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「終わらないわ。なにも、無くなったりなんかしない。始まるんだと思う。好きって伝えるだけで、何かが始まるんだと…私は思う。」
「美奈子…」
「だから私は言うわ。あんたが言えない分だけ、何度でも。そしたら、いつかあんたの中の不安な気持ちも全部無くなるでしょ?」
笑顔で言えば、彼は「負けたな…」と呟いて、なんだかとても嬉しそうに笑った。
その顔が私は好きだ、と思う。
「好き。」
「ああ…分かったから。」
いつになく顔を赤くして照れて言う彼を好きだ、と思う。
「よし、じゃ何か美味しいものでも食べに行くわよ!もちろん賢人の奢りで♪」
「…仕方ないな。」
「仕方なくない!当然でしょ?あんたの悩み事聞いてあげたんだから!」
「お前という奴は…」
はあ、と溜め息をついて頭を抱えるというお決まりのポーズをとる賢人。
いつもの二人の調子に戻ってなんだか嬉しくなった私は、先陣を切って鼻歌混じりに歩き出す。
「美奈子!」
珍しく大声で呼ばれて振り返ろうとしたら全身を包まれる感触。後ろから抱き締められた体はみるみるうちに熱を帯びていった。
だけど次の言葉で私の体温はこれ以上ないくらい高くなる。
「美奈子…愛してる。」
賢人、あんたは本当に狡い男よ。
『好き。』
を言うのに私がどれだけ勇気を使ったか分かってる?
それを全部飛び越えた言葉を…飛びっきりの言葉をいきなりくれるなんて。
悔しすぎて涙が出るわ。
だから、そう。今泣いてるのは、悔しいからなんだから。
信じられない。バカにして…。死にそうなくらい鳴り続けている私の心臓をどうしてくれるのよ。
―――世界で一番ムカついて、世界で一番愛しい貴方
結局、昔も今もそんな貴方が大好きなんだ―――
おわり