お題

□16・好きならそう言ってよ(クン美奈)
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「俺が、美奈子の事をどう思っているかって?」


久しぶりに会えた休日。いつもの高台の公園で街を見下ろしていた私は彼の顔を真っ直ぐに見て尋ねたのだ。

「そう。私のこと、どう思ってる?」

秋の風は次第に冬の気配を感じるような冷気があって、私達の長い髪の毛を揺らしていく。

そんな風が吹き抜ける間、時が止まったかのように感じたのはなぜだろう。

真面目な表情をした賢人はふと息を吐くと少しだけ目を逸らした。

「何でまた突然そんなことを聞く?」

「聞きたいから。」

「だからどうして…」

「聞きたいの!」


どうしてはぐらかそうとするの?

私から目を逸らすのはどうして?



気付いたら視界がぼんやりと霞んできたから慌てて目を拭う。

「私のこと………好き?」

今までこんなに直接的なことを聞いたことが無かったから恥ずかしくて、声が震える。

だけどどうしても聞きたかったの。

「…」

黙ってしまった賢人にいよいよ私は不安になる。

「美奈子…俺は…」

さんざん聞きたかったその先の言葉を紡がれるのが彼の様子を見たらなぜか怖い気がして、私は咄嗟に彼の胸をどんと叩く。

「やめて!」

「美奈子…」

そんな私の肩に労わるように両手を置いてくれたけれど、それも受け止められなくて彼の腕から体を離した。

「ごめん。変なこと聞いて…。ナシナシ!今のナシってことでよろしく!」

無理やり明るくしたテンションは悲しいくらいに浮いていた。

だけど今の私にはこういう風にしか振舞えない。

アルテミスに言わせれば私は愛の女神の化身らしいけれど、実際の私は自分の愛を育てることも、守ることも笑ってしまうほど下手なんだ。

くるりと踵を返してパンッと両頬を軽く叩くと元の自分に戻ろうとする。



「さ〜てと、次はどこ行く?」



その場を離れて歩き始めながら賢人に何事も無かったかのように笑顔で振り返る。

だけど今度は賢人が少しだけ泣きそうな顔をして私を見ていたから次の言葉が出なくなる。

私が彼の顔をまともに見れない間、ずっとこんな表情をしていたのだろうか。

そう思ったら胸がぎゅっと締め付けられた。


賢人は一歩一歩と近づいて、躊躇うことも無く伸ばしたその手が私の頬を撫でる。

「駄目だ。ナシにはできん。俺にも、話をさせろ。」


私がその言葉に黙って見つめ返していると、賢人はますます辛そうな顔をする。


どうして気持ちを聞いているだけなのに、こんなに悲しい顔をさせてしまうのか分からない。

今度は彼の奥に潜む想いに触れようと、逸らさずに見つめ続ける。

悲哀に満ちた表情はかつての彼と重なって…次に続く言葉にある一つの答えが私の頭の中に浮かんだ。




「怖いんだ。」





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