お題
□3・絶対的に君が足りない(まもうさ)
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次の日の夜。賢人に飲みに誘われて、遅くまで飲んだ。
自分でもどうしようもない寂しい気持ちを少しでも紛らわしたかったのだ。とにかく何も考えられないほど飲んでしまえば、あとはぐっすり眠るだけですぐに朝が来ると思ったから。
マンションの前まで来て不意に自分の部屋を見上げれば、有り得ない光景に酒でふらついていた足が止まる。
酔っているからか?都合よく夢でも見ているんだろうか。
俺の部屋には温かく光が灯されていた。
うさ…――――――!!!!
エレベーターのボタンを押してもなかなかこないから階段を一気に駆け上がる。
夢でも何でもいいからうさに会いたかった。
鍵を勢いよく開けてドアを開ける。
「うさ!」
同時に彼女のことを呼んでいた。
「まもちゃん…?」
明るい部屋の向こうから彼女の声が聞こえる。
靴を脱いで一直線にそちらへ向かう。
するとリビングのドアが開いてうさが少し恥ずかしそうに顔を覗かせた。
「えへへ。帰ってきちゃった。」
たかだか旅行で会えなかったくらいでこんなに寂しくなるなんて予想もしていなくて。
会えなかった分だけ彼女の存在の大きさを改めて感じて。
自分がどれだけうさの事が好きなのかということを再確認した。
「まもちゃん電話で泣きそうだったような気がして…」
「おかえり」
言い終わらないうちにそう言った。
存在を確かめるように。
夢でないことを確かめるために。
ぎゅうっと力強く抱きしめながら。
「ただいま♪」
何となく嬉しそうにそう言って俺の胸に頬ずりする彼女は続けて問いかける。
「寂しかった?」
「…ああ。」
酒の力もあって素直に白状すれば、「うんやっぱり早く帰ってきて良かった♪♪」と彼女は今度は腰に腕を回して抱きしめ返しながら呟いた。
「旅行はやっぱりまもちゃんと一緒に行きたいな。」
「俺も。ずっと一緒にいて欲しい。」
またしてもつい出てしまった本音に彼女は目を見開いていた。
「まもちゃん…!?酔ってる!?」
そこで初めて気付いたうさは慌ててそう言い顔を赤くする。
「…酔ってるよ。だからうさが治して。」
「ど…どうしたら…!」
あっお水か!なんて言いながら腕の中から出ていこうとする彼女を離れないように抱き寄せる。
そして吸い付くようなキスをする。
「こうすればいいから」
唇を何度も重ねてうさを感じる。
足りなかった分だけ何度も…何度も。
そして最後に、真っ赤になっている耳に唇を寄せて二度目のお帰りを囁いた。
おわり