連載
□月からの花嫁
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「結婚!?私がですかお母様!」
「そうですよ、あなた以外に誰がいるというのです?」
私はお母様に呼ばれてクイーンの玉座の間に来ていたのだけれど、突然のこの報告に頭が追い付かないでいた。
だって、まだ成人の儀も済ませていない私に結婚話というだけでも驚きだというのに、そのお相手の殿方が…
「地球国の王子エンディミオン様とって…私、お会いしたこともなければお顔も存じ上げないのですよ!?それに、そうよ…お母様もおばあ様もその先の方々も結婚せずに世継ぎである子を成す能力があって、このシルバーミレニアムの歴史を繋いできたのでしょう?私もそのつもりでしたのに…っ」
「セレニティ。」
「…っ」
ずるいわ、お母様。その威厳のある声と雰囲気には私が逆らえないことを知っているんですもの。
今目の前にいる女性は母ではなくこの国のクイーンとして私のことを呼び、見つめている。
「この国は、銀水晶の保護下ではなく、ひとつの国家としてこの先地球国と共に太陽系の繁栄を築いていくことになるでしょう。あなたには、その象徴として地球国の第一王子に嫁ぎ、月と地球の民たちへその親愛の情を示して欲しいのです。そして王子と共に王と妃となって力を一つにして欲しい。これが私からあなたへのクイーンとしての命です。」
「それが…シルバーミレニアムのプリンセスとしての、使命であると…?」
「そうです。」
迷いのない矢のごとくその言葉は私に降り注いできた。
「エンディミオン様と結婚することで、お母様や月の人々みんなが幸せになれる。そのための最善の道。」
私の願い。それがこの道の先にあるのなら。
「そうよ、セレニティ。行って…くれますね?」
「はい。行きますお母様。いえ、クイーン。」
つづく