お題

□3・絶対的に君が足りない(まもうさ)
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「じゃあまもちゃん行ってくるね…」

「ああ。行ってらっしゃい。」

わざわざ俺のマンションまで挨拶に来た彼女に玄関先で笑顔でそう返す。

「ううっ…まもちゃんに半月も会えないなんて寂しいよおっ!!」

目を潤ませて言うと、俺の袖をぐいと掴む。

「そう言うなよ。楽しい旅行が待ってるんだろ?」

「そうだけど…!」






彼女の母親が先日、何かの懸賞でヨーロッパ旅行を当てた。本当だったら父親と行く予定だったのだが仕事の都合で行けず、丁度今日から夏休みのうさにその権利が与えられたのだそうだ。

弟の進悟くんが不満タラタラだったのは言うまでもないけれど、彼は小学校のときから所属しているサッカーチームの合宿が見事に重なっていたため断念。

土産を死ぬほど買ってこないと敷居を跨がせないとかおやつ半年抜きだとか脅されたと言っていた。

相変わらず彼女は弟に色々な意味で勝てないらしい。



「お土産楽しみにしているよ。」

「うん…いっぱい買ってくるから!!」

「進悟くんにも忘れずにな。」

「げ…いや〜なこと思い出した。」

ようやく見せた笑顔が一気に暗い表情になってしまい、自分の皮肉めいた性格をこの時ばかりは後悔する。

「ごめん。でも本当に楽しんで来いよな。ヨーロッパの名所を巡れるなんてなかなかないんだから。」

頭にポンと手を置いて優しく語り掛ける。

「そう…そうだよね!うん!楽しんでくる。それで、絵葉書とか送るね!」

「ああ。待ってるよ。」

額にキスをする。

「ねえまもちゃん、こっちには?」

頬を染めながら瞳を閉じて顔を上げる可愛らしい仕草に微笑むとすぐに唇を塞いで、二度目の行ってらっしゃいを囁いた。
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