お題
□03.指先
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※ちびうさ視点
あたしとうさぎはまもちゃんの家にケーキをお土産にして遊びに来ていた。
あたしはアップルパイでうさぎは苺のミルフィーユ、まもちゃんがガトーショコラ。まもちゃんが淹れてくれた紅茶をお供に楽しいティータイムを過ごしていたのだけど。
「いや〜んミルフィーユって、どーしておいしいのにこんなに食べづらいのよ〜っ!」
もう。うさぎったら、いつものこととは言え、子どもみたいなこと言ってる。ポロポロ割れていくパイ生地と中のクリームに奮闘してる姿にツッコミを入れたくても、シナモンの利いたアップルパイと紅茶の絶妙なハーモニーにうっとりしていたあたしはそれどころじゃなかった。だって、30世紀には無い味わいなんだもん。
「そういうときは、縦に食べないで横に倒して食べていいんだぞ?」
って、まもちゃんも保護者みたいなこと言ってるし。
「そっか!まもちゃんって頭いい〜♪」
まーったく調子いいんだから。それくらいのこと、当たり前!
「そんなことないから。」
まもちゃんも、そんな照れたように言ってないでもっと厳しく諭してよ!このままじゃますますおバカで甘えん坊な大人になっちゃうわよ!?
って、言いたいけどあたしはサックサクのパイ生地に夢中でそれどころじゃなかった。
「うさ、クリーム顎のところに付いてる。」
「え?あ、ホントだ!」
指先でクリームを拭ったうさぎはそのまま口に運ぼうとした。けど。
「ミルフィーユも美味いな。」
「ま、まもちゃん!?」
うさぎの手を取ったまもちゃんは、うさぎの指ごとぱくっと食べるみたいにクリームを舐め取って、しかもちょっとそのまま軽く指先に口づけてからの満面の笑顔。
うさぎの顔は茹でた蛸よりまっかっか。
だけどあたしは最後の一口を喉に詰まらせてそれどころじゃなかった。
ケーキは最高に美味しかったはずのに、完全にそれ以上に甘ったるい将来の両親の雰囲気にそんな味は一瞬にしてどこか遠く彼方に飛んでった。
教訓。この二人はツッコミが不在だとどこまでも甘々に突っ走る。
ケーキくらい、美味しく食べさせてよおぉぉ〜…!!
2015.5.21