お題
□9・その髪に触れたい(まもうさ)
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学校からの帰り道
ふとした休日の曲がり角
どういうわけか偶然何度も出くわしてしまう金色の髪のお団子頭。
大抵向こうがやたらとでっかい声を出しているから見つけるのは俺のほう。
ちょっとからかうと面白いくらいに反応して言い返してくる元気だけが取柄のような中学生。
の、はずだったのだが。
今日はまだ一度もお団子と会っていない。
毎日毎日約束もしていないのに会えるほうが不思議なのだから、これは至って普通なはずで、動じる原因はどこにもない。
そうだそのはずだ。
なのに。
殆んど意識していないところで揺れるお団子頭を探してしまっているのはなぜなんだ。
え?
探してる?
俺が?
月野うさぎを?
おいおいやめろって。これじゃまるであいつのことを―――――
軽く頭を振って何気なく視線を上げた時だった。
「あ。」
見付けてしまった。
何なんだ俺。お団子センサーでも付いているのか?本気で疑いたくなってくる。
彼女は歩道橋の真ん中に立ち、ぼんやりと空とも地上とも言えない場所を見つめているようだった。
「え…?」
彼女は目元を拭ったあと、そのまま柵に乗せていた両腕の上に顔を埋める。その肩は震えているようにも見えた。
それを見た瞬間、俺は何かを思うよりも先に体が動いていて、気付けば歩道橋の階段を勢いよく駆け上がっていた。