お題

□縁側でおばあちゃんとスイカ
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『…………どうしてここに悠がいるの』

「え、ばーちゃんに名前どこにいんの?って聞いたら部屋でまだ寝てる、起こしてきて、って言われた」

『おばあちゃん…前に悠を部屋に入れないで、って言ったのに…』


むくりと起き上がると悠がにっこり笑った。


「働かざる者、食うべから、べから…べから……」

『べから、ず!なんであと一文字が出てこないの…』


悠は「起こしたからな!」と言ったあと、部屋を出ていった。


わたしは今、いとこにあたる田島家にいる。
お盆休みは毎年ここを訪れるのが恒例になっている。
おばあちゃん家、にあたる家が、同じ歳の悠がいるこの家なのだ。

甘やかされ末っ子同士だったわたしたちは、小さい頃はべったりだったらしい。
わたしが田島家から我が家に帰る日になったら必ず互いに号泣していたらしい。
バッチリ証拠の写真も見せられた一昨日、田島一家にからかわれたのは記憶に新しい。


寝床からはい出ると、首を回していた扇風機の切ボタンを押す。
その時、悠が言っていた、働かざる者以下略の言葉を思い出した。

何かまた手伝わされるのかと、重い腰をあげたのだった。










『あああああつっかれたあああ』

「名前体力ねーなー」

『うっさい。ちくしょう、高校球児と比べんな』

「名前はヒヨワだなー」

『……つーか、悠、部活は?』

「今日は休みー。なんて言うんだっけ、カンキュウビ?キュウカンビ?」

『休肝日、なわけないでしょ。大方、クールダウンする日、みたいなのじゃないの』


最近読んだバレー漫画にもそういう日を取り入れている学校があったはず。


『働かざる者食うべからず』


わたしの言葉に反応した悠は、ニンマリ笑った。


「キンキンに冷えてるってさ、スイカ!食おーぜ!」


畑仕事の手伝いを終えたわたしたちは、縁側からおばあちゃんを呼んだ。
暫くするとおばあちゃんは切り分けたスイカを持ってきてくれた。


「うひょーうまそー!いただきまーす!」

『いただきます』

「はいどうぞ」


ふわりと笑うおばあちゃんに癒される。
横目で見たら、悠はスイカにがっついていた。


『汁、飛ばさないでよ』

「スイカは、こーやって食うもんだ!」

『さいで』


しゃく、と、スイカをかじると、よく冷えた果汁が口一杯に広がって、渇いた喉を潤した。






縁側おばあちゃんスイ




(明日、名前はトマト収穫と田んぼの草刈りだって)
(……働かざる者食うべからず……あれ、悠は?)
(俺部活ー)
(おのれ青春小僧め)






………

おばあちゃん出番少ない…
常々田島を書きたかったんです
ほのぼの、な感じ。

141026



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