お題
□とけきったサイダーの味がした
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目の前に座る、飛雄を眺める。
やっぱりまわりの女子が騒ぐだけはある、整った容貌、さらさらな黒髪、きりっとつり上がる切れ長な目。
こりゃ、モテるわな、とため息をつく。
「何」
ため息をついたのに気づかれたらしい。
曖昧に笑ってごまかした。
夏休みに飛雄は部活をしまくっていた。
何と東京に遠征合宿に行ったらしい。
東京とか……
『うらやましい…』
「……さっきから何なのお前」
『…飛雄が都会に行ったのがうらやましいって言っただけ』
「だろ?すげーたくさん人いた!あとスカイツリー!凄かった」
『…うわお、目、キラッキラだなぁ…』
ドリンクバーに飲み物を注ぐため席を立つ。
夏休みのファミレスは思っていたより混んでいなかった。
宿題教えろ、奢ってやると言う口車に乗せられ、部活をしていない暇なわたしは宿題一式を持って隣の飛雄の家に向かったお昼3時から30分後の今。
ファミレスに行くと聞き、夏限定メニューのかき氷を奢ってほしかったが、ドリンクバーだけだった。
ドリンクバーだとは聞いていないふざけんなと愚痴をこぼしたら飛雄は激怒するだろうと予想して、内心に留めておいた。
『終わった?』
飲み物を持って席に戻る。
………そこには頭を抱えた飛雄がいた。
「……」
『……どこ?』
長い指が問3を指した。
『…あのさ、これ、さっき、教えたとこの公式使えば解けるから』
「………マジか」
『マジだから』
大丈夫かこいつ。
もってきたコップにストローをさす。
氷入れすぎたなー。
さっきから炭酸しか飲んでいない。次は抹茶ラテでも飲もう。
「なぁ、」
『何、またわかんないの』
「違ぇーよ!……お前、部活とかやんねーの?」
『部活…うーん、もう1年の半分経っちゃったし、今さらって感じもするんだよなぁ』
「…したい部活ないなら、バレー部手伝えよ」
『…マネージャーってこと?』
「あぁ」
なるほど、部活をする、というよりはマネージメントの方をする、か。
『考えたことなかったなぁ…』
「…お前は及川さんに言われて手伝ってた時あったろ」
『あぁ、あれは……』
及川先輩に、飛雄ちゃんを近くで見れるよ?って言われたからだったよね…
青かったわー自分。
あのチャラ男にわたしが飛雄への恋慕を見抜かれた…口止めの代わりに手伝いをしていたのだった。
こんなん本人に言えない。
『…バレーに興味があったからだよ』
「そうか、ならうちのバレー部のマネになれよ。また東京に行く合宿あるから都会に行けるぞ」
『考えとくー』
「………及川さんの時は即答だったくせに」
『あ、あれは!ある意味脅されたからであって、』
「弱味握られてんなよ」
『ごもっともです…』
無意識にコップを握りしめてしまっていたらしい。
両手が結露により濡れてしまった。
あぁ、氷、半分溶けてる。
どんだけわたしの体温高いんだ。
「…俺は」
ふてくされた顔の飛雄を眺める。
ストローに口をつける。
「名前に、近くにいてもらわないと、部活をしてる、って感じがしない。……前はずっと部活でも教室でも一緒にいただろ?…だから、」
ごくり、と咽下する。
「…っ、だから!マネージャー、しろよ!俺のために」
…飲み込んだ液体は、
とけきったサイダーの味がした
(あ、あぁ、うん、いいよ)
(本当か?!)
(う、うん)
(よし!じゃあ今から行くか!)
(えええ、宿題は?)
(お前を連れ出す口実。もう話は通してある)
(えぇ!何それ?!)
………
長くなった…
ただ影山を微妙にデレさせたかったたけです←
140807